専門委員会成果物

“本質的に生物学的な方法により得られた植物”の特許性についてEPO加盟国が議論

ヨーロッパ特許庁(EPO)と38の欧州特許条約の締約国の代表者および欧州委員会は,特許法委員会において,T 1063/18事件における植物の特許性に関するEPO審判部の決定について初めての意見交換を行った。 当委員会は,特に,この問題について拡大審判部に意見を求めることを支持した。また,欧州特許制度の利用者および一般公衆のための法的確実性の必要性が,議論の中で強調された。短期間での解決に向け, 議論は続けられる。
  1. T 1063/18事件
     T 1063/18事件は,クレームされた主題が“本質的に生物学的な方法によってのみ得られた植物”であることを唯一の理由として,欧州特許出願(出願番号12 756 468.0)を拒絶した審査部の決定に 対する出願人の申し立てに関するものである。
     ここでEPO審判部は,本質的に生物学的な方法により得られた植物および動物を特許の対象外とする規則28(2)は,拡大審判部による条約53条(b)の解釈に反すると決定した。なお,拡大審判部は, 条約53条(b)における,植物生産のための“本質的に生物学的な方法”の除外は,植物または植物材料などの物のクレームに対して悪影響しないと結論している。
     T 1063/18事件の決定の理由においてEPO審判部は,拡大審判部によって解釈された条約53条(b)と,規則28(2)とが矛盾することが確認された以上,条約164条(2)の観点から条約の規定が 優先すると結論付けられなければならない,と述べた。
  2. 関連条文
    • 欧州特許付与に関する条約 第53条
       欧州特許は,次のものについては,付与されない。
       (b)植物及び動物の品種又は植物又は動物の生産の本質的に生物学的な方法。ただし,この規定は微生物学的方法又は微生物学的方法による生産物については,適用しない。
       この規定は,これらの方法の何れかで使用するための生産物,特に物質又は組成物には適用しない。
    • 欧州特許付与に関する条約の施行規則 規則28
       (2)第53条(b)に基づき,欧州特許は,本質的に生物学的方法によってのみ得られた植物又は動物には付与されない。
    • 欧州特許付与に関する条約 第164条
       (2)本条約の規定と施行規則の規定とが抵触する場合は,本条約の規定が優先する。

EPO News(2019年2月20日)
https://www.epo.org/news-issues/news/2019/20190220.html

EPO Communication(2019年2月5日)
https://www.epo.org/law-practice/case-law-appeals/communications/2019/20190205.html

(参照日:2019年3月20日)

(中村 大輔)

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