専門委員会成果物

欧州特許庁,2018年次報告書を公表

 3月12日,欧州特許庁(EPO)は年次報告書(Annual Report 2018)を発表した1)。
 この中で,2018年のEPOへの出願件数,登録件数,審査処理件数,異議申立件数等の統計値を公表した。

 【出願件数】
 2018年の欧州特許出願(直接欧州特許出願されたもの及び期間中にPCT出願から欧州段階に国内移行したものの合計)は,174,317件(前年比+4.6%)であった。過去5年間, 2016年(前年比-0.6%)を除き増加傾向が続いている。
 地域別の出願人2)の分布をみると,欧州特許条約(EPC)締約国38か国が全体の47%を占めて最も多く,次いで米国が25%,アジア3か国(日中韓)が22.6%と続いた。 国別TOP3は,昨年と変わらず,首位米国(43,612件,前年比+2.7%),2位ドイツ(26,734件,同+4.7%),3位日本(22,615件,同+3.9%)であった。中国は9,401件 (同+8.8%)で,昨年の8位から5位に浮上したが,これは直近5年では最も低い伸び率であった。
 技術分野別の出願数3)をみると,最多は医療技術(13,795件),次いでデジタル通信(11,940件),コンピューター技術(11,718件)であり,昨年と順位は変わらなかった。
技術分野別TOP10において最も高い伸び率を示した分野は製薬(+13.9%,7,441件),次いでバイオテクノロジー(+12.1%,6,742件)であり全体の件数を押し上げている。
 出願人別TOP3は,首位シーメンス(2,493件),次いでファーウェイ(2,485件),サムスン(2,449件)であり,昨年と変わらなかった。日本企業では,ソニー(1,278件)11位, キヤノン(816件)16件,パナソニック(815件)17位,日立(658件)22位,三菱電機(655件)23位であった。

 【審査・登録・異議件数】
 2018年にEPOにより登録された特許の件数は127,625件(前年比+20.8%)であり,過去5年間では2014年が前年比-3.1%であったが,2015年以降4年連続増加した。 出願審査請求されてから特許付与予告通知(intention to grant)を送付するまでの平均月数は22.3か月4)であり前年実績の22.1か月よりやや伸びているが, 審査促進された出願に関しては,審査着手時から審査結果通知または特許付与予告通知を出願人に送付するまでの平均月数は2.8か月であり,前年の3.1か月よりも短縮された。
 審査官が出願を調査した件数4)は233,126件(前年比-5.8%)であった。出願を受理してからサーチレポートを通知するまでの平均月数は4.4か月であり前年の4.8か月から短縮され, 審査結果を出願人へ通知した件数は193,231件(前年比+18.8%)であった。
 EPOが国際調査機関となった場合の国際調査報告は,96.4%が種別A1での国際公開であった4)。
 2018年に異議申立期間が満了する特許に対して異議申立があったのは3.2%であった。また,4,061件の異議決定通知がなされたが,このうち全部維持は32%,一部維持は41%であり何らかの 形で73%の特許権が維持された。一方,特許取消は27%であり取消率は2017年と変わりなかった。

1)欧州特許庁年次報告書公表(2019年3月12日)
https://www.epo.org/about-us/annual-reports-statistics/annual-report/2018.html

2)複数の出願人の場合は筆頭の出願人で集計されている。

3)技術分野の分類はWIPO作成の分類表による:
http://www.wipo.int/export/sites/www/ipstats/en/statistics/patents/xls/ipc_technology.xls.

4)各種統計値詳細
https://www.epo.org/about-us/annual-reports-statistics/annual-report/2018/download-centre.html

(参照日:2019年5月4日)  

(内田 壮哉)

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