専門委員会成果物

英国政府,EU離脱に伴う英国法の改正についてガイダンスを公表

 4月2日,英国政府はEU離脱に伴う英国法の改正についてガイダンスを公表した。なお,本ガイダンスは参考情報としての位置づけである点に留意されたい。

●特許

  • 欧州特許
     →EU離脱後も現行権利の保護,権利取得については影響なし。
  • 欧州統一特許裁判所(UPC)
     →英国は2018年4月にUPC協定を批准しており,EU離脱後もUPCの枠組みに留まる方針でいる。
●商標
 EU離脱後の権利は,残ったEU加盟国のみをカバーすることになる。EU離脱時点で係属中の権利についてはEU離脱後も英国商標と同等の条件の下で再出願することができる。具体的には, EUを離脱した日から9月以内は,EU出願日を優先権主張して英国への再出願が可能である。
●意匠
  • 登録共同体意匠(RCD)
    EU離脱後の権利は,残ったEU加盟国のみをカバーすることになる。一方で,EU離脱後も英国内では英国意匠と同等の新しい権利が付与されることになる。これらの権利は英国内で更新される ことになり,英国の裁判所や知的財産庁より処理されることになる。また,EUの権利とは独立的に譲渡およびライセンス付与が可能となる。
  • 引き続き英国内で保護される。権利者には新しい権利が付与されたことが通知され,権利者がそれらの権利を望まない場合にはオプトアウトも可能である。
  • 非登録共同体意匠
    →EU離脱後の非登録共同体意匠は,保護対象の範囲が異なる英国の非登録意匠権を通じてより長い期間存続される。これに加え,特定の権利を保護するための国内法が英国内に存在しない場合, 全ての非登録意匠権を保護する新しいスキームを新設する。
●著作権
 英国内の著作物に対する著作権の保護範囲については,EU離脱後大きく変わることはない。EUの国境を越えた著作権の仕組みについては,現状の仕組みのまま機能することは無くなるが, 英国の権利保有者とEUの権利保有者の相互に利益をもたらす取り決めを模索していく。

●知的財産権の消尽
 →欧州経済地域(EEA)から英国内への並行輸入については,従来と同様に知的財産権の消尽が認められる
  (EEAでの知的財産権の消尽スキームを維持)。
 →英国からEEA内への並行輸出については,国によっては知的財産権の消尽に制限がかかる場合がある。

英国政府(2019年4月2日)
https://www.gov.uk/government/publications/ip-and-brexit-the-facts/ip-and-brexit

(参考)2018年12月3日 JIPA2018年度外国特許ニュース:欧州特許情報「英国政府,「合意なきEU離脱」となった場合の知的財産分野に関わるガイダンスを公表」
http://www.jipa.or.jp/kaiin/katsudou/iinkai_seikabutsu/gaikoku_tokkyo/18news/ou-1812-02.html

(参照日:2019年6月20日)    

(米澤 雄志)

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