専門委員会成果物

世界五大特許庁が先端技術とAIに関する共同タスクフォースに合意

 6月13日,韓国の仁川で五大特許庁長官が年次総会を開催した。IP5として知られる5つの特許庁は,韓国特許庁(KIPO),欧州特許庁(EPO),日本特許庁(JPO),中国国家知識産権局(CNIPA),および米国特許商標庁(USPTO)であり,世界の特許出願の約85パーセントがIP5で処理されている。
 会議の議長はKIPOのPark Wonjoo長官で,EPOのAntónio Campinos長官,JPOの宗像直子長官,CNIPAのShen Changyu長官,およびUSPTO長官のAndrei Iancu商務省知財担当次官が出席した。 また世界知的所有権機関(WIPO)のFrancis Gurry事務局長がオブザーバーとして会議に出席した。
 「我々IP5パートナーの協力は,世界中にてより整合のとれた手続きを確立することにより,効率的かつ効果的なグローバルIPシステムを構築するためのカギとなっています」と EPOのAntónio Campinos長官は述べた。さらに,「IP5の協力はサクセスストーリーであると言えます。EPOとそのパートナー特許庁は現在,IP5の協力体制をさらに強化すべく新たな協力の段階に 入っており,より包括的なIP政策を推進しています。それにより,知的財産権を束ねた包括的なIPポートフォリオを扱うユーザーのニーズによりよく対応することを目指しています」とも述べている。
 5人の長官は,先端技術の分類,グローバルドシエサービスの継続的改善,ワークシェアリングの強化,特許実務と手続きのハーモナイゼーションといった,IP5主導による最近の進展を歓迎した。
 また,技術開発のグローバル化へ適切に対応し,将来の対応や連携を議論するために先端技術や人工知能(AI)のタスクフォースの設立に合意し,さらに,IP5協力の効率性を高めるためのIP5の 体制改善にも合意した。
 一方,長官らは出願人の負担軽減と作業効率向上を目的とした特許実務ハーモナイゼーションに関する3つのサブプロジェクトである,発明の単一性,先行技術の引用,および記載・開示要件, に関する取り組みについての最終結果を支持した。長官らはまた,IP5の特許実務ハーモナイゼーションの具体的な成果が,ユーザーに大きな利益をもたらしていることの認識を共有した。さらに, IP5の展望に沿って将来議論されるであろう新しいハーモナイゼーションの話題を選択する必要性も認識した。
 別の会議では,長官らは5つの地域の業界代表と会合し,最近の動向のアップデートを行い,新しい先端技術やAI,IP5の将来の取り組みといった戦略的分野の知的財産問題について討議した。 業界代表は,世界規模の技術革新に対応するためのIP5の共同の取り組みへの支持を表明し,これらの取り組みにおいて特許庁と協力する意欲を再確認した。IP5と業界は,IPの重要性とIP5 プロジェクトの利点に関するコミュニケーションをより幅広い層に広げ,支援活動を強化することに合意した。
 IP5長官による次の会議は2020年にCNIPAによって主催される予定である。

EPOニュース(2019年6月13日)
World’s five largest patent offices agree on joint task force for emerging technologies and AI
https://www.epo.org/news-issues/news/2019/20190613a.html

(参照日:2019年7月1日)    

(三野 一学)

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