専門委員会成果物

特許協力条約(PCT)40年間の歩み

1978年に発効した特許協力条約(PCT)は,2018年に40周年という節目の年を迎えた。PCT年次報告(2019年版)では,特別テーマとして,この40年間(1978〜2018)の動向をさまざまな角度から分析している。
  1. PCT加盟国
     条約発効時,13カ国から始まったPCT加盟国は,1990年に45カ国となった後,急激な勢いで増加し,2000年には108カ国となった。2000年代以降,増加のスピードはしだいに緩やかになっていくものの,2010年には142カ国,2018年には152カ国となった。これは,世界の国の数の約80%に相当する数である。
  2. 出願件数,地域
     PCTに基づく国際出願(以下,PCT出願)の件数が累計100万件に達したのは,1978年の運用開始から26年目の2004年であり,その7年後の2011年には累計200万件,さらにその5年後の2016年には累計300万件を突破した。そして,運用開始から40年目となった2018年には,累計370万件を超え,2020年の初め頃までには累計400万件に達するであろうと予想されている。累計件数が100万件に到達するのに運用開始から26年かかったPCT出願は,この40年で大きく成長し,その結果,2016年から2020年までの4年間で,累計件数が100万件を超えるだろうと予想されている。
     また,過去40年間のデータからは,地域別シェアの移り変わりを確認することができる。運用開始から1990年代の半ば頃までは,ヨーロッパおよび北米地域からの出願件数だけで,PCT出願全体の約88%を占めていたが,この時期以降,この2地域の合計シェアは,徐々にその割合を減らしていくことになる。これに代わって,出願件数を増やしたのはアジアであり,2018年の出願件数では,アジアがついにPCT出願全体の半数以上(50.5%)を占めることとなった。さらに,国別シェアに目を向けると,PCT出願全体(40年間の合計出願件数)における中国のシェアは8.1%であるのに対し,2018年の出願(1年間の合計出願件数)だけを見ると,中国は21.1%のシェアを占めており,近年は,アジアの中でも,特に中国からの出願がすさまじい勢いで増えていることが分かる。
  3. 出願人,技術分野
     過去40年間に公開されたPCT出願について,出願人別の件数を見てみると,上位10位までに入った出願人は,全て企業であり,ランキング順に,パナソニック(日本),ファーウェイ(中国),フィリップス(オランダ),ボッシュ(ドイツ),シーメンス(ドイツ),ZTE(中国),クアルコム(米国),エリクソン(スウェーデン),三菱電機(日本),インテル(米国)の10社であった。 この中で2位となったファーウェイ(33,899件)は,2000年代の初めにPCT出願を開始したばかりであるが,首位のパナソニック(34,081件)との差は,わずか182件であり,近年における中国企業の躍進が目立つ結果となった。
     また,過去40年間に公開されたPCT出願の中で,特に件数が多かった技術分野は,コンピュータ技術,医療技術,電気機器,デジタル通信の4分野であった。ここで紹介した上位10社はいずれも,電気工学の分野(デジタル通信,コンピュータ技術等)が活発であり,パナソニック,フィリップス,シーメンスを除く7社は,2018年に公開されたPCT出願においても,上位10位までに入っている。

PCT Yearly Review
https://www.wipo.int/pct/en/activity/index.html

(参照日:2019年7月16日)    

(佐々本 典子)

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