専門委員会成果物

欧州特許庁,2018年度の品質報告書を公表

 2019年7月9日,欧州特許庁(EPO)は,2016年度以来3回目となる品質報告書を公表した。
 2018年度の品質報告書では,特許付与プロセスをさらに掘り下げ,EPOでの手続きの各フェーズで実施されているチェックおよびセーフガードについて説明している。 また,品質報告書は,EPOの部門レベルで解析した豊富なデータを提供し,EPOによって実施された品質改善策を検討し,ユーザから寄せられたフィードバックを引用しながら, 将来のために計画されている構想について議論している。
 EPOは,業務の品質に関する透明性と説明責任を高めるために,2018年にユーザ団体との関与を強化した。新たな戦略計画の下で宣言された目標でもあるこのアプローチは, 今後も継続され,EPOとそのステークホルダが,合意した品質の定義に到達し,品質に関する認識を整合させる一助となることを目指している。
 2018年度の品質報告書は,以下の活動分野の分析を含んでいる:
  • ユーザ満足度調査
     2018年度の結果では,ユーザ満足度が更に向上したことを示している。「満足」または「とても満足」と回答したユーザは,サーチでは84%,審査では77%, 異議では74%であった。方式審査の分野ではわずかに減少したが,かなり高いレベルであり,87%(前回は89%)であった。
  • コンピュータ関連発明(Computer Implemented Invention:CII)
     CIIは,引き続きユーザに重要視されている。CII出願の一貫した処理を確保するために,CIIに関するガイドラインの全面改訂が完了し,CII専門家の内部ネットワークが確立された。
  • 適時性の改善
     EPOは,2018年にステークホルダへのサービスを改善した。EPOにおいて,今後数年のうちに,タイムリーに高品質で効率的な処理が安定状態になるにつれて,様々な出願人にとって 最適な手続き期間が,議論の重要なトピックとなってくるだろう。
  • 2018年の成果物の監査
     成果物の品質の監査は,改善の余地を示した。4回の定期監査のうち3回で非常に高いレベル(サーチは94.6%,異議は99%,分類は96%)の結果が維持された。一方, 特許付与の監査では,法令遵守率の低下(84.7%から76.6%)があった。これらの結果は慎重に分析され,多くの改善策が講じられようとしている。

EPOニュース(2019年7月9日)
https://www.epo.org/news-issues/news/2019/20190709.html
(参考)品質報告書2018
http://documents.epo.org/projects/babylon/eponet.nsf/0/79B3608B5B4D3F71C125842D0040675A/$File/quality_report_2018_en.pdf
(参照日:2019年8月23日)    

(川端 沙織)

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