専門委員会成果物

EPOおよびEUIPOが知的財産の欧州経済への影響に関する共同調査結果を発表

 9月25日,欧州特許庁(EPO)および欧州連合知的財産庁(EUIPO)は,2014年から2016年までの欧州経済に対する知的財産権の重要性を分析した共同調査報告書を発表した。 これは,EUでの経済成長と雇用に対する,知的財産を平均以上に利用する産業の貢献を追跡する報告書の第3版である。
 調査報告によれば,知的財産権集約型産業は,EUの年間GDPの45%および,6,300万人の雇用(全体の29%)を生み出している。これら産業の雇用は,EUの雇用全体が 僅かに減少している中,2011年から2013年と比較して130万人増加しており,またこれらの産業における従業員1人あたりの付加価値は,他よりも高く,平均賃金も 他の業種より47%高く,特に特許集約型産業では72%高くなっている。
 EPO長官は,知的財産権集約型産業の重要性とともに,これらの産業における知的財産権を組み合わせ,まとめて出願する戦略が,付加価値の高い製品やサービスを生み出し,欧州の長期的優位性を確保することを述べた。
 また,EUIPO長官も,これらの産業はEUが将来,より一層繁栄するため重要な役割を果たすものであり,すべての企業と事業者,特に中小企業の知的財産権を確実に保護できるようにするのが我々の課題であると述べた。
 また,報告書では,これらの産業は欧州と他地域の貿易の大部分(81%)を占めており,貿易黒字に貢献していることが述べられた。
 報告書では,知的財産のうち特許集約型産業が2,400万人を雇用し,EUのGDPの16%を占めていることを述べ,その中でも特定の技術分野に着目している。 例えば,気候変動緩和技術(CCMTs)におけるこれらの産業は,2.5%の雇用とEUのGDPの4.7%を占めており,CCMTsの経済的な比重は,パリ協定に定められた 目標に向かう国々において増加すると予測されている。欧州の出願人からEPOに出願された特許のうちCCMTsに関係するものは10%近くを占めている。
 また,この報告書では,第4次産業革命およびデジタルトランスフォーメーションに大きく貢献する産業にも注目している。これらの産業がEUの雇用および GDPに占める割合はそれぞれ1.9%,3.9%であり,これは2011年から2013年に比べ伸びている。また,これらの産業における1人あたりの平均賃金は,知的財産 集約型産業以外の産業の2倍以上に達している。
 意匠集約型産業も,EU経済に大きく影響しており,EU内の3,070万人の雇用と,EUの総GDPの16.2%を生み出しており,2016年には660億ユーロの貿易黒字を生み出した。 また,商標集約型産業も,EU内GDPの37%を占め,4,670万人の雇用に関係している。

EPOニュース(2019年9月25日)
https://www.epo.org/news-issues/news/2019/20190925.html

EUIPOニュース(2019年9月25日)
https://euipo.europa.eu/ohimportal/en/news?p_p_id=csnews_WAR_csnewsportlet&p_p_lifecycle=0&p_p_state=normal&p_p_mode=view&journalId=5331625&journalRelatedId=manual/
(参考)

EPOおよびEUIPOの共同調査報告書(第3版:2019年9月25日)
https://www.epo.org/service-support/publications.html?pubid=201#tab3
(参照日:2019年10月20日)    

(山本 隼也)

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