専門委員会成果物

世界知的所有権指標:2018年,特許,商標,意匠の出願件数が過去最高に達する

 WIPOの年次世界知的所有権指標(WIPI)レポートによると,世界中のイノベーターが2018年に330万件の 特許出願を行った。これは,9年連続での増加で,前年比で5.2%増となる。世界の商標登録出願活動は1,090万件に達し,意匠登録出願は130万件に達した。WIPOのFrancis Gurry事務局長は,「アジアは,特許,商標,意匠及び他の知的財産権の出願活動において,世界経済の中心となっている。中国単独で,世界の特許出願のほぼ半数を占めており,インドも際立った増加となっている。」とコメントしている。  主な知財権の概要は,以下の通り。

【特許】中国の国家知識産権局は2018年に最も多くの特許出願を受理した。これは,154万件と世界全体の46.4%に 相当し,2〜11位の知財庁の合計と同程度となる。中国,米国,日本,韓国,及び欧州知財庁5つの知財庁を 合わせて,世界全体の85.3%を占める。
 上位5つの知財庁のうち,中国(+11.6%),EPO(+4.7%),及び韓国(+2.5%)は,出願件数が増えた。 一方,日本(−1.5%)と米国(−1.6%)は僅かに減少した。米国は,2009年以降では,初の減少となる。
 アジアは,最大の特許出願活動を行っている地域として地位を高めている。アジアに所在する知財庁は, 2018年に世界中で出願された全出願の3分の2(66.8%)を受理している。
 新規市場拡大への需要を示す外国特許出願では,米国の出願人が最大数の出願を行った。

【商標】2018年に,世界で1,430万の区分に及ぶ1,090万件の商標登録出願がされた。同出願で指定された 区分の数は,2018年に15.5%増加し,9年連続の成長を記録した。
 中国の国家知識産権局は,最大規模の約740万の区分数を有する。次いで,米国(640,181),日本 (512,156),欧州連合知的財産庁(EUIPO)(392,925),イランが続く。
 上位20の知財庁のうち,2017年から2018年までに大きく伸びたのは,インドネシア(+29.1%), 中国(+28.3%),インド(+20.9%),韓国(+14.5%),および英国(+12.4%)である。
 アジアの知財庁への商標登録出願は,2018年の世界の商標登録出願活動の70%を占め,2008年の36.2%から 大幅に増加した。ヨーロッパの知財庁への商標登録出願の割合は,2008年の38.4%から2018年の15.8%に 減少した。アフリカ,ラテンアメリカ,カリブ海地域,オセアニアに所在する知財庁の合計割合は2018年に 8.4%だった。

【意匠】2018年に,世界で130万の意匠を含む推定100万件の意匠登録出願がなされ,前年比で5.7%増加した。 中国の国家知識産権局は,2018年に,世界全体の54%に相当する708,799件の意匠登録出願を受理した。 次いで,EUIPO(108,174),韓国(68,054),米国(47,137),ドイツ(44,460)が続く。
 上位20の知財庁のうち,英国(+42.4%),ロシア連邦(+21%),イタリア(+16.6%),インド (+13.6%),中国(+12.7%)の5つが意匠登録出願数の2桁の増加を報告した。
 アジアの知財庁への意匠登録出願は,2018年の世界の意匠登録出願の3分の2(69.7%)を占めた。 次に,ヨーロッパ(23%),北米(4.1%)が続く。2018年のアフリカ,ラテンアメリカ,カリブ海, およびオセアニアの合計割合は3.2%だった。

WIPOプレスリリース(2019年10月16日)
https://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2019/article_0012.html
World Intellectual Property Indicators 2019
https://www.wipo.int/edocs/pubdocs/en/wipo_pub_941_2019.pdf

(参照日:2019年11月5日)    

(大庭 弘貴)

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