専門委員会成果物

第59回WIPO加盟国総会を開催

  1. 概要
    2019年9月30日から10月9日まで,スイスのジュネーブで世界知的所有権機関(WIPO)の第59回総会が 開催された。WIPOが提供するIPサービスへの需要の世界的な高まりを反映し,事業収益は好調に推移した。
  2. 昨年度の活動レビュー
    総会の冒頭でのFrancis Gurry事務局長による昨年の活動の報告の要旨は以下の通りである。
    1. (a)財務基盤の安定化
       技術の急速な変化がもたらした記録的な需要の拡大により,WIPOのIPサービス事業は大変好調である。 2018年度は4億3,060万スイスフランの収入があり,4,250万スイスフランの黒字1)で終了し,2019年度も 同様に良好な結果となる見込みである。
      1) WIPOは独立採算制の国連専門機関であり,2018年度は年間の予算の96%が有料サービスの 提供により賄われている。
    2. (b)個別のサービスの状況
       WIPOが提供する各IPサービス(PCT,マドリッド議定書,ハーグ制度)の利用は記録的な数字となった。PCTの 加盟国数は152か国で2017年度と変わらないが,2018年度の出願件数は253,000件となり,3.9%増加した。 2020年には,1978年に制度が開始されて以来の累積出願件数が400万件に達する見込みである。マドリッド 議定書には新たに5か国が加盟した。2018年度は61,200件の出願があり,前年度と比べて6.4%増加した。 日本,米国,中国がそれぞれ大きく出願件数を増やした。ハーグ制度には新たに5か国が加盟した。2018 年度は5,429件の出願があり,前年度と比べて3.3%増加した。
    3. (c)仲裁調停センター
       2018年度はインターネットドメイン名に関する仲裁・調停件数が3,447件にのぼった。1999年以来の累積の 取扱い件数は43,000の商標,80,000以上のドメイン名に及んだ。最大のccTLDである中国の“.CN”および “.中国”に係る仲裁・調停の扱いを開始した。
    4. (d)共通ポータルサイトの運用開始
       WIPOが提供する48の異なるIPサービスへの共通のポータルサイトを2019年9月に運用開始した。
    5. (e)AIアプリケーションの開発と導入
       IPサービスへの需要の高まりに対して,WIPOはさまざまなAIアプリケーションを開発し活用することで応えていこうとしている。WIPO Translate(機械翻訳サービス),世界初の商標画像検索システム, 自動分類システムなどが,既に利用されている。
  3. 作業プログラムと予算の承認
     総会は次の2か年度(2020〜2021年)の作業プログラムと予算を承認し,閉会した。
     承認された主なプログラムは以下を含む。
    • 次期WIPO事務局長の指名手続,指名を行う調整委員会の設立
    • 議事録自動生成システムの導入
    • 意匠法条約の外交会議を2020年9月に招集
次期2か年度の収益は6.4%増加し8億8,280万スイスフランに達する見込みであり,9,580万スイスフランの 黒字が予想されている。
また,WIPO管理下の26の条約において,新たに11の国が加盟したことが発表された。

https://www.wipo.int/about-wipo/en/assemblies/2019/a_59/

(参照日:2019年11月12日)    

(石田 雄仁)

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