専門委員会成果物

WIPOがAIと知財政策についての意見募集を開始

 世界知的所有権機関(WIPO)は,2019年12月13日に知財政策と人工知能(AI)に関する討議報告書案を発表し,全世界から意見募集を開始した。
 「AIは我々の仕事や生活の様式を急速に変え始めていて,全世界に共通な課題を解決する助けとなる大きな可能性を持っているが,政策面の問題点や課題がある。」とWIPOのFrancis Gurry事務局長が述べた。
 また,「機械学習は電子データの形式での情報に依拠していて,全世界的なデジタル経済における知財とイノベーションの中心である。すべての人が関心をもって,政策立案者が直面する問題点の形成を支援し,集中的な意見交換のための専門知識を共有していただきたい。」と述べた。

 AIは知財にどのような影響を及ぼすのか?
 AIは,技術とビジネスにおける重要な開発をますます活発にしている。通信から自動運転車両へと業種をまたがって用いられている。
 増大するビッグデータの蓄積と安価で高い計算能力の進歩がAIの成長を刺激している。AIは経済的・文化的な製品やサービスの創造,生産及び流通に重大な影響がある。知財制度の主な目的の一つは経済的・文化的システムのイノベーションと創造を刺激することにあるので,AIは多くの方面で知財と関わっている。
 2019年1月にWIPOが発行したAIイノベーションの展望を調査した研究報告「WIPO技術動向」は,政府や産業界の政策決定者のみならず全世界の関心がある市民に対して共通するAIに関する情報基盤を提供している。
 同年9月にWIPOは,加盟国と利害関係者がAIの知財政策に対する影響について議論する会合を開催した。会合では,加盟国と利害関係者が政策立案者へ提起する問題について議論した。
 その会合の総括として,Gurry事務局長は,知財政策へのAIの影響に関する論点のリストを作成する作業をWIPOが始めると公表した。この論点のリストは,将来の構造化された議論の基礎を形成することになる。
 この新しい討議報告書案への意見の提出は2020年2月14日まで受け付けられる。意見の提出後,討議報告書が改訂される。提出された全意見はWIPOのウェブサイトに掲出される。

WIPOプレスリリース(2019年12月13日)
https://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2019/article_0017.html

知財政策とAIに関する討議報告書案
https://www.wipo.int/edocs/mdocs/mdocs/en/wipo_ip_ai_ge_20/wipo_ip_ai_2_ge_20_1.pdf

(参照日:2020年1月20日)

   

(田中 寿志)

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