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〈シンガポール〉シンガポール特許庁:世界最速をめざした特許早期審査プログラム試行スタート(SG Patent Fast Track Program)

 2020年5月4日,シンガポール特許庁(IPOS)において,特許権の早期権利化を目的とした,SG Patent Fast Trackプログラム※1の試行が始まりました。
 このSG Patent Fast Trackプログラムは,2022年4月29日までの2年間のパイロットプログラムですが,申請から特許権付与までを6か月程度とし,極めて短期間での特許権取得にむけたIPOSの挑戦とも言えます。
 試行からあまり時間が経っていないため,実際の特許登録までの期間など,未知数の部分も多いですが,既に試行開始後,数件の申請実績がある旨がIPOSから発表されています。
 本プログラムを活用するためには,後述の通り,第一国出願をシンガポールに行う必要があるなど,いくつかの申請条件をクリアする必要がありますが,2020年1月1日以降の出願では,同国における特許審査の外国ルート(修正実体審査)を利用できなくなったことから,同国での特許権の早期取得はもちろんのこと,この特許権を活かしたASPEC申請による,ASPEC加盟国(ブルネイ,カンボジア,インドネシア,ラオス,マレーシア,フィリピン,シンガポール,タイおよびベトナム)での特許権の早期権利化を実現するツールとして期待できる可能性があり,今後の運用動向が注目されます。

■SG Patent Fast Trackプログラムの特徴

  • 2018,2019年度に開始された,“the Fin Tech Fast Track”(FTFT),Accelerated Initiative for Artificial Intelligence(AI2)に代替する仕組み
  • すべての技術分野に関わる発明(制限なし)
  • 毎月5つのアプリケーションの上限があり,毎月1日にリセットされます。未使用の容量は翌月にロールオーバーされ,最大10のアプリケーションの上限が適用
■申請要件
  • 第一国出願をシンガポールとすること
  • 出願クレーム数が,20クレーム以下であること
  • IPOSへの申請件数が,月の上限値(5件)を超えていないこと
  • 申請者の上限が,年間10件の上限値以内であること
  • 手続きは,登録された特許代理人を通じて行うこと
  • IPOSに対して,出願と同時に,審査請求がなされたオンライン出願であること
■申請手続き
  • 早期審査が必要な理由,および出願の技術分野を明記した事情説明書の提出
 早期審査が必要な理由の例)
  • 製品のライフサイクルが短い
  • 環境や公衆衛生に関係する
  • 汚水処理やスマートエネルギー関連
  • COVID-19と闘う治療薬

注 記
※1 IPOS提供SG Patent Fast Trackプログラムの概要
https://www.ipos.gov.sg/docs/default-source/resources-library/patents/circulars/(2020)-circular-no-2-launch-of-sg-patent-fast-track-programme-on-4-may-2020-(final).pdf

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