専門委員会成果物

PTABの最終決定に異議を申し立てる手段はCAFCに控訴することのみであると明示した事例

CAFC判決2020年1月10日
Personal Audio, LLC v. CBS Corporation

[経緯]

 Personal Audio, LLC(P社)は,CBS Corporation(C社)が特許8,112,504(’504特許)を侵害している として,地裁に提訴した。陪審は侵害と特許クレームの無効について審議した。
 一方,第三者による’504特許に対する当事者系レビュー(IPR)の請願があり,PTABは特許クレームが無効で ある旨の最終決定書を発行した。地裁は,両社合意のもと,PTABの決定に対するCAFCの再審理が終了するまで 判決に入るのを待っていた。CAFCがPTABの最終決定を支持したため,地裁は両社に共同ステータスレポート (レポート)の提出を要求した。両社は前例に従い,地裁がC社に有利な判決を下すことに同意し,地裁は 判決を下した。
 これに対してP社は,PTABの最終決定自体の合法性に対する異議と,当該決定に起因する地裁の判決に対する 異議とを示し,CAFCに控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは地裁の判決を支持した。
 CAFCは,法的根拠(特許法319条,141条(c),142-144条)を示した上で,PTABの最終決定に異議を申し立てる 手段はCAFCに控訴することのみであることを指摘し,地裁にはPTABの決定に対する異議を審理する権限はなく, 地裁の判決からの控訴においてPTABの決定に対する異議を審理する権限はCAFCにはないとした。
 また前例に従い,訴訟の根拠とされている特許クレームについてPTABでの無効の決定が控訴審で支持された 場合には,地裁は当該訴訟を終了させなければないことに対し,P社はレポートで同意し,なんらの反論も 行っていないとして,CAFCは地裁の判決に対する異議を認めなかった。

(服部 武直)

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