専門委員会成果物

ライセンスを受けている特許の継続出願も,黙示的に当該ライセンスの範囲内に含まれることが示された事例

CAFC判決 2020年2月6日
Cheetah Omni LLC v. AT&T Services, Inc., et al.

[経緯]

 Cheetah Omni LLC社(H社)は光通信ネットワークに関する特許7,522,836(’836特許)の特許権者である。 AT&T Services, Inc.(A社)は,自社の光ファイバー通信ネットワークでハードウェア及びソフトウェアのシステムを使用している。H社はA社の光ファイバー設備及びサービスが’836特許を侵害していると地裁に提訴した。 また,地裁において,A社に向けて光ファイバーシステムを製造,供給しているCiena Corporation(C社)が訴訟に参加することを許可された。
 過去の訴訟においてH社とC社の間で結ばれた和解契約では,H社の提訴は禁止されていることを理由に,C社とA社は略式判決を申し立てた。そして,当該和解契約においてH社がC社に与えたライセンスは,被疑侵害製品の全てに対する黙示的なライセンスを含んでいることをC社とA社は主張した。地裁はC社およびA社の主張に同意し,略式判決を認めH社の訴えを棄却した。H社はその決定を不服とし,CAFCへ控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCはH社の過去の訴訟経過及び和解契約の再確認を行った。2011年の訴訟では,H社はC社の製品がH社の 特許7,339,714(’714特許)を侵害しているとして提訴し,’714特許のライセンスを与える和解契約を結んでいる。 当該和解契約には,ライセンスの対象として’714特許の全ての親出願が含まれることが明記されていた。なお,’714特許は,特許6,943,925(’925特許)の一部継続出願であり,’836特許は’925特許の継続出願である特許 7,145,704(’704特許)の継続出願という関係である。
 当該和解契約には,ライセンスの範囲内に含まれる特許が番号によって明記されていなかった。一方でH社およびC社が排除した特許のリストは明確に挙げられていることにA社及びC社は注目した。従って,もしH社およびC社が’836特許をライセンスの範囲から排除することを意図していたのであれば,排除される特許として’836特許も明示されるべきであったと,C社は主張した。
 ある製品にライセンスされた特許から派生した継続出願は,契約に明確な相互の意図が表示されない限り,その製品が継続出願においても同様にライセンスされていると推定される(TransCore, LP v. Elec. Transaction Consultants Corp., 563 F.3d 1271, 1279)。本件において’925特許は過去の訴訟の和解契約において明確にライセンスされていた特許であり,そのライセンスの範囲は,’925特許から派生した継続出願である’836特許へも黙示的なライセンスを含んでいる。もし,H社が継続出願にまでライセンスの範囲を拡大しないつもりで あったのであれば,それを和解契約の中で明確にするのはH社の義務であったと,CAFCは判示した。
 以上により,CAFCは地裁の判決を支持し,原告の訴えを棄却した。

(成田 洵)

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