専門委員会成果物

ライセンスを受けている特許の継続出願も,黙示的に当該ライセンスの範囲内に含まれることが示された事例

CAFC判決 2020年2月13日
Serta Simmons Bedding, LLC, et al. v. Casper Sleep Inc.

[経緯]

 Serta Simmons Bedding,LLC(S社)は補強材を配置できるマットレスとマットレスの成形方法に関する3件の特許(当該特許)を保有している。S社は,Casper Sleep Inc.(C社)が販売する製品が当該特許を侵害するとして,特許侵害訴訟を地裁に提訴した。これに対して,C社は非侵害の略式判決を求める申立てを地裁に提訴した。略式判決の申立ては係属中であったが,設定した日付までに,C社がS社に30万ドルを支払い,侵害行為をやめることを取り決めた和解合意を締結し,和解合意を地裁に通知した。
 しかし,地裁は和解合意に言及することなく,C社が非侵害とする略式判決を下した。地裁の略式判決を受けて,C社は和解合意によって求められていた支払いを拒否した。一方,S社は,和解合意の履行と非侵害の略式判決の無効を求める申立てを地裁に対して提出した。地裁が申立てを却下した為,S社は地裁の判決を不服としてCAFCに控訴し,C社もCAFCに反訴した。(クロスアピール)

[CAFCの判断]

 CAFCは,地裁の命令を破棄し,和解合意が履行されるように地裁が管轄することを求める決定を下した。 和解合意には両当事者の全ての訴訟と反訴を放棄する際に,30万ドルの支払いが要求されているため,C社は和解合意によって訴訟自体の法的な重要性は無くなっていないと主張した。これに対して,CAFCは,合意された問題に関しては,もはや事件性や争点は無いとしたCAFC判決(Gould v. Control Laser Corp., 866 F.2d 1391, 1392(Fed. Cir. 1989))に基づき,拘束力のある和解合意は,将来の履行を要求する内容があったとしても訴訟自体に法的な重要性が無くなると判断し,地裁が下した非侵害の略式判決を破棄した。

(毛利 直人)

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