専門委員会成果物

直接輸入手続きをしていなくとも,関税法337条の輸入者に該当すると判断された事例

CAFC判決 2020年3月2日
Comcast Corporation, et al. v. International Trade Commission

[経緯]

 Rovi Corporationら(R社)は,関税法337条の違反を主張してITCに訴状を提出した。
 R社は,TVプログラムへのリモートアクセスのための双方向型システムを規定する特許8,006,263(’263特許),および特許8,578,413 (’413特許)に関し,Comcast Corporationら(C社)の顧客がC社のX1システムを使用することによりこれらの特許を直接侵害していると 主張した。ITCは,侵害システムで使用されているX1セットトップボックス(告発製品)を輸入することにより,C社が関税法337条に 違反していると認定した。
 行政法判事は,告発製品がARRIS Enterprises, Inc.ら(A社)とTechnicolor SAら(T社)によって輸入されているが,C社が 告発製品の設計,製造,輸入に関与しており,そのため関税法337条の意図する輸入者であると認定した。ITCは予備決定(ID)のこの 認定を支持し,限定排除命令と停止命令をC社被請求人に向けて発した。限定排除命令は,C社,およびC社に代わり輸入するA社と T社よる告発製品の輸入を排除する。
 C社,A社,T社は控訴した。R社は仲裁人として参加した。
 C社は,C社の誘導行為は輸入の後かつ無関係に,完全に国内で行われるため,C社の行為が関税法337条の下で起訴できるものではない,また,C社自体は輸入していない,と主張した。 

[CAFCの判断]

 CAFCは,’263特許と’413特許の直接侵害が,C社により,あるいはC社に代わって輸入された告発製品がC社の顧客のデバイスに装着され使用されたときに生じるのであり,関税法337条における侵害製品であるとするITCの判断に誤りはないとした。
 関税法337条では,有効な特許を侵害する製品の,米国への輸入,輸入のための販売,または所有者,輸入者,または荷受人による 輸入後の米国内での販売を禁じている。
 IDによれば,当該製品の輸入をC社が管理している広範囲の証拠があり,その中には,告発製品が仕様書と容認基準に従うことを A社とT社に要求している。製品はC社向けにのみ設計されており,C社は許可なく販売することをA社に禁じている。C社だけが, A社とT社に販売予測と注文を送ることで米国に入ってくる製品の量を制限できる。
 CAFCは,C社の輸入による侵害の認定は実質的な証拠に裏付けられており,関税法337条違反のITCの判断は成文法と先例に合致 するものであるとして,ITCの判断を支持した。

(河内 祥光)

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