専門委員会成果物

特許審判部(PTAB)のクレーム文言解釈に誤りがあると判断し差し戻しとなった事例

CAFC判決 2020年4月8日
Technical Consumer Products, Inc., et al. v. Lighting Science Group Corporation

[経緯]

 Lighting Science Group Corporation(L社)は発光ダイオード(LED)照明器具を販売しており,交換用LED照明器具を対象とした特許8,201,968(’968特許)を保有している。従来の交換用LED照明器具は交換対象の寸法に合わせた設計が必要であるのに対し,’968特許はさまざまな構造レイアウトに適合する交換用LED照明器具を特徴とし,その形状を規定した発明である。
 Technical Consumer Products, Inc.(T社)は’968特許に対し先行文献Chou特許7,670,021(Chou)により,’968特許の独立クレーム1は自明であるとしてIPRを請願した。
 L社は’968特許の独立クレーム1に記載されているヒートスプレッダ,ヒートシンクおよび外部光学部品の全長Hおよび全外寸法Dの比H/D≦0.25(H/D制限)について言及し,ChouはH/D制限の計算においてヒートシンクを含めて計算され,H/D制限が0.25よりも大きな値となるため,Chouは’968特許のH/D制限を開示していないと主張した。また,その主張を裏付けるため,L社はヒートシンクが取り外された場合,Chouは十分な放熱機能を有さないという専門家の証拠を提出した。
 特許審判部(PTAB)は,L社の主張を認め,H/D制限の計算にヒートシンクが含まれる場合,ChouはH/D制限を開示しておらず,特許権は有効との決定を下した。
 T社は当事者のその他の議論について言及せず,H/D制限を開示していないという点のみを理由に自明性はないとしたPTABの決定に誤りがあるとしてCAFCに控訴した。  

[CAFCの判断]

 CAFCはPTABがクレーム文言を誤って解釈したと判示した。
 CAFCは,クレーム1に記載の通り,H/D制限の計算に含めるヒートシンクは「ヒートスプレッターに環状に結合されたもの」に限定されるため,PTABの「全てのヒートシンク」を対象にH/D制限を計算し,H/D制限を開示しないという解釈は誤りであると認定した。
 以上より,CAFCはPTABの事実認定が実体的な証拠に裏付けられていないと結論付け,PTABの決定を棄却した。

(野崎 祐志)

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