専門委員会成果物

先行技術との相違点は有限な数の特定された予測可能な解決方法の設計上の選択に過ぎず自明であると判断された事例

CAFC判決 2020年5月5日
Uber Technologies, Inc. v. X One, Inc.

[経緯]

 X One, Inc.は,デバイス間での位置情報交換に関連する特許8,798,593(’593特許)を所有する。Uber Technologies, Inc.(U社)は,日本の特開2002-10321(Okubo)と特開2002-352388(Konishi)の組み合わせに基づいて自明であると主張し,IPRを請願した。
 ’593特許のクレームは,仲間のモバイルデバイスとの双方向位置情報共有システムに関するもので,「プロットされた場所を含む地図を最初の個人に送信する」ソフトウェアを限定する。この限定では,地図上の最初の位置情報プロットをサーバーに要求し,プロットとされた地図を使用者のモバイルデバイスへ伝達する。この「サーバーサイドプロッティング」が,配車システムに関するKonishiに開示されている。これに対してOkuboは,双方向位置情報共有システムではあるが,使用者のモバイルデバイスが最初に地図を受信し,そのあとに使用者のデバイス上で他の使用者の位置が地図上にプロットされる「ターミナルサイドプロッティング」を開示する。
 PTABは,OkuboとKonishiの組み合わせではクレームの限定が自明とはならない,と判断した。
 U社はCAFCへ上訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,KSR最高裁判決(KSR International Co. v. Teleflex Inc., 550 U.S. 298(2007))を引用し,PTABの自明性の判断が誤りであるとして,PTABの決定を却下し,本件を差し戻した。
 CAFCは,まず’593特許も2つの先行技術も「使用者が他の使用者の位置を知り,辿るのを補助する」という同じ課題解決を試みていると認定した。そのうえで,発明当時,達成可能な方法としてはサーバーサイドプロッティングとターミナルサイドプロッティングの2つしか知られておらず,すなわち,発明当時の当業者が設計上選択すべきa finite number of identified, predictable solutions(有限な数の特定された,予測可能な解決方法)である,と認定した。サーバープロッティングとターミナルプロッティングの違いは,結局,位置情報を伝達する前にプロットするか,伝達した後にプロットするかの設計上の選択に過ぎず,一方を他方に置き換えることは自明であるとした。

(孫 天益)

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