専門委員会成果物

ITCの発行した包括排除命令の取消しを被請求人でない行為者が求める際に,特許無効の主張は適法ではないと判断された事例

CAFC判決 2020年7月16日
Mayborn Group, Ltd., et al. v. International Trade Commission

[経緯]

 2017年,Alfay Designs, Inc., Mighty Mug, Inc., およびHarry Zimmerman(請求人)は,ITCに対して,Mayborn Group, Ltd.およびMayborn USA, Inc.(M社)を除く複数の被請求人に対する特許8,028,850(’850特許)の侵害主張と,あらゆる行為者に対して侵害商品の輸入禁止を求める包括排除命令(GEO)の請求を行った。
 ITCは,調査を開始した。行政法判事は,請求人が和解しなかった2社が特許を侵害していると判断し,さらに,侵害行為を行う事業主体が多すぎてこれを特定することが困難であるとして,委員会にGEOを認めるように進言した。ITCはGEOを発行した。
 M社は,請求人からITCの調査について知らされていたが,何の措置も取らなかった。その後,請求人は,M社に,該M社製品が’850特許を侵害していてGEOの適用を受けることを通知するとともに,税関・国境取締局(CBP)が関与していることをほのめかした。M社は,ITCに対してGEOの取消しを申し立てて,’850特許は特許法102条及び103条に基づき無効であるから,GEOを取り消すべきと主張した。ITCは,GEO発行後にM社が有力な先行技術を発見したことは,法の下での変更された状態“changed condition”には該当しないとして,この申立てを却下した。
 M社はこれを不服としてCAFCに控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,ITCの判断を支持した。
 CAFCは,ITCがM社のGEO取消しの申立てを拒否したことには,以下の2つの独立した理由があるとした。1つは,ITCは調査または執行手続の過程で被請求人から無効の抗弁が提起された場合に限り,特許の有効性を裁定することができるが,M社は被請求人ではなかったため,ITCはこの問題を裁定する根拠を欠いていたこと。もう1つは,いまだ’850特許が無効と判断されていないのでchanged conditionにはあたらず,M社の特許請求項に関する無効の主張はGEO取消し申請の適切な根拠とならないということ。
 また,M社は特許の有効性の判断に公共の利益のchanged conditionを考慮すべきと主張したが,CAFCは,M社は申請書の中でGEOの発行により公共の利益の状況が変化したことを示していなかったとして,その主張を認めなかった。

(新井 一秀)

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