専門委員会成果物

数式を適用したプロセス改善の方法クレームは特許法101条の特許適格性を有するとした事例

CAFC判決 2020年7月31日
XY, LLC, et al. v. Trans Ova Genetics, LC

[経緯]

 XY, LLC(X社)は,フローサイトメトリー装置を制御して,男性を決定する精子細胞と女性を決定する精子細胞などの微妙に異なる粒子を高精度で分離する方法特許USRE46559(’559特許)を含む,非ヒト哺乳類の性選択技術に関する7つの特許を侵害しているとしてTrans Ova Genetics, LC(T社)を提訴した。T社は,’559特許のクレームは特許法101条に基づき特許適格性がないと主張した。
 地裁は,過去の最高裁判決(Alice Corp. v. CLS Bank Int’l, 573 U.S. 208 (2014))で提示された特許適格性判断の2段階フレームワークにあてはめ,’559特許のクレームはAliceステップ1の判断において,多次元データを回転させる数学的方程式に向けられたもので抽象的アイデアに該当するため,特許法101条に基づき特許適格性がないとするT社の主張を認めた。X社はこれを不服として控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,’559特許のクレームは単に多次元データを回転させる数学的方程式に向けられたものではなく,リアルタイムで粒子を識別するために数式を用いることを特徴とし,フローサイトメトリー装置をリアルタイムで少なくとも2つの集団に分類および選別するために操作する,改良された方法に向けられているとした。’559特許のクレームは,全体としてみたときに,特許法による保護対象である機能を実現する構造やプロセスに,数式を実装或いは適用したものであると判断した。よって,CAFCは,Aliceステップ1において,’559特許のクレームは抽象的アイデアに該当しないと判断し,同クレームが特許法101条に基づき特許適格性がないとした地裁の判断は誤りであるとした。

(齋藤 匡史)

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