専門委員会成果物

先行技術文献の追加証拠の提出に関する要件を判示した

CAFC判決　2020年11月25日
VIDSTREAM LLC v. TWITTER, INC.

［経緯］

　VidStream LLC（Ｖ社）は，「ソーシャルメディアウェブサイトにおけるコンテンツの記録と公開の方法」に関する特許9,083,997（’997特許）を保有している。Twitter, Inc.（Ｔ社）は，文献Bradfordと他の先行技術文献との組み合わせに基づき特許発明が自明であるとして，’997特許の全クレームに対してIPRを請願した。
　IPRにおいて，文献Bradfordは’997特許の有効日以降である2015年12月13日に公開されており，先行技術に該当しない旨をＶ社は主張した。一方，Ｔ社は文献Bradfordの公開日が2011年11月８日であることを示す追加証拠を提出して応答した。
　PTABは，文献Bradfordが’997特許の先行技術文献に該当し，’997特許は自明であるとして特許無効の決定を下した。Ｖ社は当該決定を不服としCAFCに控訴した。　

［CAFCの判断］

　CAFCは以下の判断を行い，PTABの判断を確認支持した。
　第一に控訴審において，Ｔ社の新たな証拠はIPRの請願とともに提供されておらず，IPRにおける審判ガイドに違反している旨をＶ社は主張した。これに対し，Ｔ社は，新たな証拠の提出は，文献Bradfordの公開日についてのＶ社の異議申し立てに対する正当な応答であると主張した。CAFCは上記審判ガイド及び判例（Anacor Pharm., Inc. v. Iancu, 889 F.3d 1372, 1380-81 （Fed. Cir. 2018））を参照し，新たな証拠が特許権者によって導入された証拠に対する正当な応答である場合，または先行技術を理解するために当業者の知識を文書化する場合，IPR請願人は新たな証拠を提出できるとして，Ｔ社の主張を認めた。
　第二にCAFCは，Ｔ社から提出された追加証拠に基づき，文献Bradfordが先行技術を構成する旨のPTABの判断を確認支持した。CAFCは，次の①～⑥の証拠，①文献Bradfordが2011年に著作権登録されたことを示す著作権庁の証拠，②文献Bradfordの全てのコピーにおける2011年を示す著作権日，③既存の出版社の存在，④アマゾンウェブページにおいて2011年に販売されたことを示す事項，⑤2011年８月25日にMARCレコードが付された本の存在，および⑥’997特許の優先日前における文献Bradfordの公開およびアクセシビリティを示す全ての証拠，に基づいて，文献Bradfordの公開日を認定し，Bradford文献が’997特許の先行技術文献を構成するとした。
　以上より，CAFCはＴ社による新たな証拠の提出を認め，上記証拠に基づき，文献Bradfordが’997特許の先行技術を構成し，文献Bradfordと他の文献に基づいて’997特許が自明であり特許無効としたPTABの決定を支持した。

（藤田　雄作）

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