専門委員会成果物

WIPO事務局長，日本を訪問し閣僚，政府高官および民間企業のリーダーと対談

　WIPOのFrancis Gurry事務局長（以下，Gurry氏）は日本を公式訪問し，政府関係者や産業界のリーダーと会談し， WIPOと日本との関係，イノベーションにおけるAIおよびビッグデータの影響，および，IPシステムについて議論した。
　Gurry氏は，閣僚や他の政府高官との会談で，日本の多国間で懸案を調整し処理しようとする多国間主義への関りやWIPOへの支援を歓迎し，また，日本政府とWIPOは，グローバル経済の成長支援および持続可能な開発目標（SDGs）達成のためのイノベーションの促進について継続的な協力を再確認した。以下に会談の概要を紹介する。

①梶山経済産業大臣との会談
　日本とWIPOとが良好で継続的な協力関係を築く方法と，SDGs達成のためのイノベーションを促進する方法について議論した。
②萩生田文部科学大臣との会談
　2019年１月１日に日本で施行したマラケシュ条約の実施について意見交換を行った。また，萩生田大臣は，効力発生間近となった北京条約における著作権および関連する分野に対するWIPOの努力に感謝を述べた。
③松永特許庁長官との会談
　2013年に環境技術の普及を後押しすることを目的に立ち上げられたWIPO GREENを，日本特許庁（以下，JPO）が支援する覚書に署名した。WIPOの官民パートナーシップは，環境負荷低減技術の活用のための，技術革新と国際的な技術交換の促進に焦点を当てており，WIPO GREENは，環境技術のイノベーター，環境技術における解決方法を探している人達，環境負荷低減技術を支援する公共および民間企業，並びに，グリーンイノベーション等に関連する分野の専門家を結び付ける。最近，日本企業16社が，環境技術の提供者としてWIPO GREENに参加した。また，WIPOにおけるAIおよびIPに関する審議会の進捗と，AIに支援されてなされた発明の保護に関するJPOの方針について議論した。また，JPOおよびその他IP5の特許庁は，AI関連技術の発明の特許審査基準について意見交換した。
　また，Gurry氏は，パナソニック株式会社を訪問した。同社は特許協力条約（PCT）の世界的なトップユーザーの１つで，太陽光発電電力を蓄える電気自動車用電池などの環境技術の大手サプライヤーであり，また，2019年にWIPO GREENパートナーになっている。
　２日間の日本滞在中に，Gurry氏は，他の政府高官とも会談し，また，日本知的財産協会（JIPA）が主催する会議に出席した。席上，Gurry氏は次のように述べた：「早急に国際的な協議を必要とする多くのIP政策の課題が山積している。しかし，AIは複雑で強力な汎用技術であるため，AI政策と従来のIPシステムへのAIの影響に関するテーマは，公開協議において不可欠である。この分野における日本の経験と意見は，IPの視点で見たAI政策の国際協議の初期段階において，適切な論点をまとめるうえで貴重である。」

WIPO News（2020年２月20日）
https://www.wipo.int/about-wipo/en/dgo/news/2020/news_0011.html

（参照日：2020年３月25日）　　

（中村　大輔）

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