専門委員会成果物

欧州特許庁,2019年特許統計を公表

 3月12日,欧州特許庁(EPO)は2019年のEPOへの特許出願件数及びその傾向に関する特許統計(EPO Patent Index 2019)を発表した1)。  

【出願件数】
 2019年の欧州特許出願(直接欧州特許出願されたもの,及びPCT出願から欧州段階に国内移行したものの合計)は,181,406件 (前年比+4.0%)であった。過去5年間では2016年に0.5%減少したが,2017年からは一貫して増加傾向が続いている。
 地域別の出願人2)の分布をみると,欧州特許条約(EPC)締約国38か国が全体の45%を占めて最も多く,次いで米国が25%,アジア3か国 (日中韓)が24%と続いた。国別TOP3は,昨年と変わらず,首位 米国(46,201件,前年比+5.5%),2位 ドイツ(26,805件,同+0.5%), 3位 日本(22,066件,同−2.3%)であった。2019年において地域別の出願数は全体的に上昇傾向であるが,日本だけが微減傾向であった。
 2019年は中国からの出願が急増した。中国は12,247件(同+29.2%)で,昨年の5位から4位に浮上し,これは2010年の出願件数(2,061件) と比較して6倍になった。
 出願人別TOP3は,首位はファーウェイ(3,524件)で昨年の2位から上昇した。次いでサムスン(2,858件)も昨年3位から2位に上昇し, 3位はLG(2,817件)で昨年の4位から上昇した。昨年首位だったシーメンス(2,619件)は5位に転落した。日本企業では,ソニー(1,512件) 9位,パナソニック(782件)18位,日立(740件)19位,キャノン(698件)21位,三菱電機(685件)23位であった。
 2019年に最も高い伸び率を示した分野は,デジタル通信分野とコンピューター技術分野である。技術分野別の出願件数3)をみると, デジタル通信(14,175件,前年比+19.6%)は昨年1位だった医療技術(13,833件,同+0.9%)を追い越し,首位となった。コンピューター 技術(12,774件,同+10.2%)は3位であった。同分野は全ての分野・産業において広がるデジタル変換技術を加速する上で中心的な 役割を果たすものである。
 デジタル通信分野においては,中国企業の伸びが著しく(前年比+64.5%),次いで米国企業(同+14.6%),韓国企業(同+36.1%)が 続いた。欧州企業からの出願の伸びは緩慢であった(同+3.1%)。同分野はコンピューターと遠隔地通信との接点に当たるものであり, 実用が開始された5G無線ネットワークにおいて必要不可欠なものである。企業別ランキングのTOP3は,ファーウェイ,エリクソン, クアルコムであった。
 コンピューター技術分野の内訳は,人工知能,特に機械学習,パターン認識,イメージデータ加工及びデータ収集技術が含まれる。 同分野の国別ランキングは,米国が約40%を占め圧倒的である。次いでEPO加盟国が約30%を占めるが,中国は約10%を占めるに過ぎない。 この分野でのリーディングカンパニーは,アルファベット(グーグル),マイクロソフト,サムソン,ファーウェイ,インテル,シーメンスである。

【登録件数】
 2019年にEPOにより登録された特許の件数は137,784件(前年比+8.0%)であり,2015年以降5年連続増加した。特許登録件数の 国別ランキングでは,首位のEPO加盟国が44%を占めた。次いで米国25%,日本16%,中国5%,韓国5%と続き,この順位は昨年と変わらない。

注 記
1) 欧州特許庁特許統計値公表(2020年3月12日)
  https://www.epo.org/news-issues/news/2020/20200312.html
2) 複数の出願人の場合は筆頭の出願人で集計されている。
3) 技術分野の分類はWIPO作成の分類表による:
  http://www.wipo.int/export/sites/www/ipstats/en/statistics/patents/xls/ipc_technology.xls.

(参照日:2020年4月13日)    

(内田 壮哉)

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