専門委員会成果物

COVID-19への対応に関するEPOとCNIPAの共同声明

  1. 概要
     6月30日,欧州特許庁(EPO)と中国国家知識産権局(CNIPA)は,共同でCOVID-19の影響を受ける全ての関係者と完全に連帯している旨の声明を以下の通り公表した。
     30年以上にわたる強力な両国間協力の結果,EPOとCNIPAは包括的な戦略的パートナーシップを構築し,特許の品質向上と特許制度のハーモナイゼーションに貢献している。中国とヨーロッパの関係は,EPOとCNIPAが受理する出願数の増加にも反映されている。2019年,EPOが中華人民共和国から受理する出願が前年より約30%多くなった。EPC加盟国も中国へ42,000件の発明特許を出願し,前年比4.9%の増加を記録した。
     コロナウイルスの経済への影響が具体化し始めているため,ビジネスの継続性がこれまで以上に必要とされている。知的財産権を集中的に使用する産業は,我々の経済を支える上で基本的な役割を果たす。EUではそれらの産業がEUの雇用の39%,同地域のGDPの45%を生み出している。同様に,2018年に中国の特許集約型産業の付加価値は10.7兆元に達し,同国のGDPの11.6%を占め,中国経済の高度な発展を支える重要なサポートとなっている。いずれは,これらの産業が世界経済の回復に貢献するであろう。
     EPOとCNIPAは,世界中のユーザーがヨーロッパや中華人民共和国で高品質の特許保護を利用するための対策の実施に全力で取り組んでいる。具体的には,EPOは時間制限と料金期限を延長し,ビデオ会議を介して口頭審理を開催することでユーザーに高い柔軟性を提供する一方,CNIPAは権利を復活し,要求された認証資料を削減し,特許料の延滞料金を免除した。これらの対策は,ユーザーにこれまでにないレベルのサポートを提供している。
     EPOとCNIPAは,公共の特許データベースを充実させ,特許情報ソースを利用可能にすることにより,パンデミックとの戦いを引き続きサポートしていく。これらの情報ソースは,研究機関や大学など,COVID-19を打倒するための我々の社会の取り組みにおいて中心的な役割を果たす全ての関係者にとって極めて重要である。我々の特許データベースを参照することで科学者は常に最先端のイノベーションを監視し,さらに発展させることができるため,両方の特許庁が提供する特許文献は研究にとって重要である。Espacenetなどの公共データベースには,世界中の1億1千万件を超える特許文献が含まれている。CNIPAの特許検索および分析システムは,とりわけ医薬品検索や特許分析を含む,充実した検索および研究機能を提供している。
     COVID-19パンデミックが世界的に広がっている現在の困難な時期において,EPOとCNIPAは特許庁間の長期的で友好的かつ活動的な協力に基づいてユーザーをサポートするために一致協力している。世界的なパンデミックによって引き起こされる課題を乗り越え,コロナウイルス後の状況に直面するユーザーを,我々特許庁が引き続きサポートするよう協力していく。

    EPO会長 António Campinos
    CNIPA長官 Shen Changyu

    EPO及びCNIPAの共同声明:
    https://www.epo.org/news-events/news/2020/20200630.html

    (参照日:2020年7月1日)

    (三野 一学)

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