専門委員会成果物

WHO,WIPO,WTOが医療技術とイノベーションのアクセスに関する研究報告(第二版)を発表

 7月29日,世界保健機関(WHO),世界知的所有権機関(WIPO),世界貿易機関(WTO)の事務局長は,医療技術とイノベーションへのアクセス(公衆が入手する権利・手段)に関する3者間研究報告の第二版を発表した。
 この研究報告では,医薬品,ワクチン,医療機器や診断等の技術や,そのイノベーションへのアクセスを決定するキーファクターについて論じられており,第二版ではさらに,公衆衛生,知的財産,貿易の相互の関わりについて,経験に基づいた実践的な内容が加わっている。
 また,第二版には,初版が発行された2013年以降の重要な進展が収められている。新たなトピックとして抗菌剤耐性や,最先端の健康技術が加わり,健康,イノベーション,貿易に関する最新のデータや,知的財産法や法学の進展についても盛り込まれている。
 また,第二版の作業が完了した後に始まったCOVID-19の危機に対処するための進展や対策の概要が,第二版の冒頭において述べられている。その中では,COVID-19に関連し,本研究で設定された健康,貿易,知的財産の枠組についての課題が挙げられており,各課題に関連する本研究報告の章が参照可能となっている。知的財産に関するトピックとしては,医薬品特許のデータベース提供や,医療に関する技術を利用できるようにするための特許制度上の例外が紹介されている。
 第二版の発表日のビデオメッセージにおいて,WTOのRoberto Azevêdo事務局長は,政策の一貫性と協力の必要性を強調し,研究,開発,製造そして配送まですべてのプロセスに及ぶことが必要と述べた。そしてAzevêdo事務局長は,3つの機関の協力によりこれまでメリットがもたらされており,これを反映させることにより各国も同様のメリットを得られること,そのための政策論議に今回の第二版が役立つことを述べた。
 また,WIPOのFrancis Gurry事務局長は,健康,貿易,イノベーションが相互に関わる問題に取組むため,3つの国際機関が各々の専門知識を結集させたものが第二版であると述べた。そして,COVID-19パンデミックに立ち向かうためには,学際的なアプローチと,国際機関間の協力が必要であることを強調した。
 WHOのTedros Adhanom Ghebreyesus事務局長は,手に負えない価格,知的財産の障壁,不当な関税などの,医療技術とイノベーションへのアクセスの障壁を取り除かなければならないと訴えた。そしてCOVID-19パンデミックへの我々の対策は,世界的な健康の脅威に直面した時に,我々が団結することによって何ができるかを示しており,それは世界の多くの人の命を救い健康を変えることが可能な協働であると述べた。
 この研究報告は,政策立案者,議員,国際機関の代表,NGO,研究者の他,健康,イノベーション,知的財産および貿易の交わる点における問題の概要を知りたい人々のために作られており,またWHO,WIPOおよびWTOの技術的な協力活動のための資料としても利用可能なものと紹介されている。

WIPOニュース(2020年7月29日)
https://www.wipo.int/policy/en/news/global_health/2020/news_0003.html
WHO,WIPO,WTOの研究論文の第二版
https://www.wipo.int/publications/en/details.jsp?id=4511
(参照日:2020年8月26日)

(山本 隼也)

Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.