専門委員会成果物

EPOとIEAが電池と電力貯蔵技術に関する特許出願統計に基づく研究結果を公表

 9月22日,欧州特許庁(EPO)と国際エネルギー機関(IEA)は電池と電力貯蔵技術に関する研究結果(Innovation in batteries and electricity storage)を発表した1)

【全体】
 EPOとIEAが発表した共同研究によると,電池技術やその他の電力貯蔵技術の分野における特許出願の総量は,2005年から2018年の間で,全技術分野の平均の4倍の成長率である年率14%で成長した。
 特に,電池技術が電力貯蔵技術の分野の特許出願のほぼ90%を占め,主に携帯電子機器や電気自動車に使われるリチウムイオン電池によってイノベーションが推進されている。
 また,電池技術に関する世界的な競争を日本と韓国を始めとするアジアの企業がリードしていることが示された。

【出願件数】
 2000年以降,電力貯蔵技術の分野において,全世界,特許ファミリーベースで65,000件を超える特許出願が行われた。年間出願件数は,2005年には約1,500件であったところ,2018年には7,000件を超えるまでに急増した。この間の平均年間成長率は14%であり,全技術分野の平均値(3.5%)を大幅に上回っている。
 2000年から2018年において,電池技術の出願は,電力貯蔵技術全体の10分の9を占め,電力貯蔵ソリューション技術の割合(電気(9%),熱(5%),機械(3%))を大きく上回った。電池技術は,近年大きな上昇を続けている唯一の分野であり,2018年に,これまでにない高い数字に達し,電力貯蔵技術に関するイノベーションの世界で支配的な地位を築いている。

【リチウムイオン電池】
 またリチウムイオンに関する電池技術が,2005年からのイノベーションの大半を占めていることが示された。2018年の電池技術の分野の特許出願において,リチウムイオンを材料とするものは45%を占めており,他の材料によるものは7%であった。
 電池セルの分野において,製造及び設計関連の特許出願がこの10年で3倍になった。特に2018年には,これらの2つの分野で,電池セルの分野の特許出願のほぼ半分(47%)を占めるに至った。これは市場が成熟し,効率的な大量生産の重要性が高まってきたことを明確に示す指標である。

【アジア企業のリード】
 世界の電池技術に関する特許の出願人において,アジア企業がトップ10のうち9つを占め,トップ25の3分の2を占めている。上位5社はSamsung(韓国),Panasonic(日本),LG(韓国),Toyota(日本),Bosch(ドイツ)であり,この5社で2000年から2018年の全特許出願の4分の1以上を行った。
 米国とヨーロッパにおいては,中小企業/研究機関も重要な役割を果たしている。全出願人における中小企業/研究機関の割合は日本(3.4%/3.5%)や韓国(4.6%/9.0%)では低いのに対して,米国(34.4%/13.8%)やヨーロッパ(15.9%/12.7%)ではそれらは高い割合を示している。


注 記
1) 欧州特許庁ニュースリリース(2020年9月22日)
https://www.epo.org/news-events/news/2020/20200922.html
(参照日:2020年9月22日)

(伍賀 靖洋)

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