専門委員会成果物

EPO及びCNIPAとの間で国際調査に関するパイロットプログラム開始

 2020年10月20日,欧州特許庁(EPO)は,中国国家知識産権局(CNIPA)との間で,国際調査に関する2年間のパイロットプログラムを開始することを発表した1)。
 本パイロットプログラムによれば,中華人民共和国の国民および居住者は,特許協力条約(PCT)による国際出願を英語で行うことを条件に,国際調査機関(ISA)としてEPOを選択することが可能になる。
 本パイロットプログラムは,2020年12月1日から開始される。本パイロットプログラムへの参加を希望する中国の出願人は,CNIPAまたは世界知的所有権機関の国際事務局(IB)のいずれかを受理官庁として国際出願をする必要がある。件数は,最初の12か月で2,500件,次の12か月で3,000件が予定されている。
 CNIPA局長Shen Changyu博士は,以下のコメントを発表している。
 「中国は知的財産の活動を非常に重要視している。中国企業は,IP保護を中核的な競争力と持続可能な発展を保証するために必要なものと考える。本パイロットプログラムは,CNIPAとEPOの間の包括的戦略的パートナーシップ2)の重要な成果の一つであり,中国の出願人がヨーロッパでIP保護を受けるのに役立つ。」
 EPO長官António Campinos氏は,以下のコメントを発表している。
 「これはCNIPAとの戦略的協力における歴史的な瞬間であり,私たちの仕事の質の高さへの信頼の現れだと思う。EPOは中国の出願人にとってのISAとして指定可能なCNIPA以外の最初の特許庁になれたことを非常に誇りに思う。私たちは中国および世界中からの出願人に可能な限り最高のサービスを提供することを約束する。」
 移行期間の間は,本パイロットプログラムに参加する中国の出願人は,CNIPAを受理官庁として国際出願を行い,EPOをISAとして選択するとともに,国際調査手数料をユーロ(EUR)でEPOに直接支払う必要がある。将来的には,国際出願時に当該手数料をCNIPAに対して人民元(CNY)で支払うことができるようになる。
 さらに,本パイロットプログラムに参加する中国の出願人は,ISAとしてのEPOによって国際調査が行われた後,PCT第Ⅱ章に従い,所定の料金をEPOに直接支払うことを条件に,EPOに国際予備審査の請求も行うことができる。
 本パイロットプログラムにより,EPOは,中国の出願人に対して,発明の特許性に関する明確な評価を示す国際調査報告(ISR)及び見解書(WO/ISA)を提供する仕組みを確立する。これにより,PCTにおける国内/地域段階,特に欧州段階に入るかどうかについて,タイムリーかつ詳細な情報に基づいて決定するための確固たる基盤が中国の出願人に提供される。さらに,そのISRとWO/ISAにより,出願の審査を加速したい中国の出願人は,早期に欧州段階に入り,早期審査を請求し,補充欧州調査(supplementary European search)なくして出願の審査を受けることができる。

注 記
1) EPOニュース(2020年10月20日)
Joint communiqué EPO-CNIPA pilot starts on 01 December, 2020
https://www.epo.org/news-events/news/2020/20201020.html
2) EPOニュース(2019年11月12日)
EPO and Chinese IP office enhance their comprehensive strategic partnership
https://www.epo.org/news-events/news/2019/20191112.html
(参照日:2020年11月24日)

(直井 雄作)

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