専門委員会成果物
米国弁理士(非弁護士)の出願業務に関して秘匿特権を認めた事例
CAFC判決 2016年3月7日In re Queen’s University at Kingston
[経緯]
Queen’s University at Kingston(以下,Q大)は,アイコンタクトによる機器を制御するインターフェースに関する特許群を保有しており,Samsung Electronics Co., Ltd. (以下,S社)に対して特許侵害訴訟を提起した。ディスカバリーにおいて,Q大は,米国弁理士とのコミュニケーションに関する文書を秘匿特権に基づいて提出を拒否した。
一方,S社は,非弁護士とのコミュニケーションであるため,文書を提出させるよう地裁に申し立てた。
地裁は,非弁護士の米国弁理士には秘匿特権がないとして,S社の申し立てを認めた。
これを不服とし,Q大は,CAFCに控訴した。
[CAFCの判断]
CAFCは,米国弁理士が出願代理業務の役割を担うとの最高裁の判断に基づいて,出願代理業務に関し,非弁護士の米国弁理士とのコミュニケーションの秘匿特権を認めた。また,CAFCは,米国弁理士の秘匿特権がなければ,依頼人とのコミュニケーションが妨げられるため,米国弁理士の秘匿特権を認めるということは,公共の利益にかなうと判断した。
さらに,米国弁理士は出願に関する依頼人の法定代理業務に従事するため,米国弁理士の秘匿特権は,弁護士の秘匿特権と同じ重要な公共利益を促進すると判断した。
一方,CAFCは,訴訟や売買のための他人の特許の有効性や属否に関する鑑定については,秘匿特権がないと判断した。
このように,CAFCは,出願代理業務の範囲で非弁護士の米国弁理士の秘匿特権を認め,地裁に差し戻した。
(山口 健太郎)
