専門委員会成果物

特許侵害訴訟における裁判地(Venue)及び人的管轄権(Personal Jurisdiction)に関する従前の解釈を維持した事例

CAFC判決 2016年4月29日
In re:TC Heartland LLC

[経緯]

 Kraft Foods Group Brands LLC(K社)は,インディアナ州に本社を持つTC Hartland LLC(H社)に対し,H社の製品がK社の持つ特許権を侵害しているとしてデラウェア州連邦 地裁へ訴訟を提起した。H社は,デラウェア州に居所(reside)は無いが,2013年に,総売り上げの約2%に相当する量の被疑侵害製品をデラウェア州に出荷していた。
 この事実に基づき,H社は,デラウェア州が適切な裁判地(Venue)でないこと,及び,人的管轄権(Personal Jurisdiction)が欠如していることを理由に,CAFCに対し, K社による訴訟の却下,もしくはインディアナ南部連邦地裁への移送を求める申立(Petition for writ of mandamus)を行った。

[CAFCの判断]

①裁判地(Venue)について
 H社は,普通裁判籍に関する条項(28 U.S.C. §1391)に対する2011年改正に基づき,普通裁判籍における法人の居所の定義を,特許侵害訴訟における裁判籍の規定に適用できなく なったと主張し,デラウェア州連邦地裁は,本件特許侵害訴訟における適切な裁判地ではないと主張した。
 CAFCは,普通裁判籍に関する2011年の改正は,特許侵害訴訟の裁判籍に関する1990年のCAFCによるVE判決(VE Holding Corp. v. Johnson Gas Appliance Co., 917 F.2d 1574)に 基づく解釈に影響を与えるものでは無く,普通裁判籍に関する条項に基づく法人の居所の定義が適用されるので,デラウェア州連邦地裁は適切な裁判地ではないとするH社の主張は 不当であるとして退けた。

②人的管轄権(Personal Jurisdiction)について
 H社は,2014年のWalden最高裁判決(Walden v. Fiore, 134 S. Ct. 1115, 1121 n.6)を引用し,デラウェア州連邦地裁は,デラウェア州で販売された被疑侵害製品に対する特許 侵害に対してのみ人的管轄権(Personal Jurisdiction)を有すると主張した。
 CAFCは,非居住者が,確立している流通網を通して当該管轄地(forum)に被疑侵害製品を意図して出荷し,特許侵害に対する訴因がこの行為に基づき生じたと主張されている 場合には,法廷地への最小限の接触(minimum contacts)の要求を満たすとした1994年のCAFCによるBeverly判決(Beverly Hills Fan Co. v. Royal Sovereign Corp., 21 F.3d 1558, 1571)を支持し,H社がデラウェア州に被疑侵害製品を出荷した行為は,デラウェア州における人的管轄権を満たす為の最小限の接触の要求を満たすと判断し,デラウェア州は H社への人的管轄権を有するものとして,H社の主張を否定した。

(髙野 舞子)

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