専門委員会成果物
先行技術より前の先発明であることを示す為の「誠実な努力」は,実施行為の連続性ではなく,その努力が合理的に連続していることが求められると判断された事例
CAFC判決 2016年11月15日Perfect Surgical Techniques, Inc. v. Olympus America, Inc., et al.
[経緯]
Perfect Surgical Techniques, Inc.(P社)は,手術器具に関する特許(6,030,384)(’384特許)を保有している。IPRにおいて,上記特許の先行技術として日本の公開特許(特開平10-33551) (JP ’551)が挙げられた。P社は,’384特許発明がJP ’551より前の先発明であることを示すために,’384特許の発明者の着想から発明を実施するまでに行っていた行為を示す証拠を提出した。しかし,PTABは, P社が,3つの期間において十分な実施事実を示していない等として,’384特許をJP ’551により新規性がない又は自明であるため,無効であると審決した。これを不服として,P社はCAFCに控訴した。
[CAFCの判断]
AIA以前の§102(g)には,発明の優先度を定めるためには,発明を着想した日および実施した日に限らず,その発明を最初に着想し,実施した者が,他人の着想より前から行った誠実な努力( reasonable diligence)をも考慮しなければならないことが規定されている。この誠実な努力とは,連続的であることが条件となる。CAFCは,PTABが要求する連続的であるとする条件は厳密すぎであり,先例とも整合しないとした。すなわち,特許権者は,発明者が所定の期間を通して,誠実な努力を連続的に実施したことを示す必要はなく,発明者の努力が合理的に連続していることを示す必要があると判示した。
そして,P社の提出した証拠は,誠実な努力の条件を満たしているとして,PTABの審決を無効とし,差し戻した。
[反対意見]
Schall判事は,PTABの判断方法は,先例とも合致しており,また,P社が十分な実施事実を示していない最初の期間においては,発明者の誠実な努力が欠けているとの見解を示した。
(大脇 知徳)
