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〈中国〉最高人民法院による2016年度知的財産権司法保護状況の公示
(2017年4月27日)

 最高人民法院は,2017年4月27日に2016年の知的財産権司法保護状況を公示した1)。報告によると,2016年に人民法院が新たに受理した第一審,第二審,再審の各種知的財産権関連受理件数は177,705件 (前年度比+19.1%),既済件数は171,708件(前年度比+20.9%)とそれぞれ増加している。
 民事事件では,知的財産権関連の第一審受理件数は136,534件(前年度比+24.8%),既済件数は131,813件(前年度比+30.1%)とそれぞれ増加している。その内,専利は12,357件(前年度比+6.5%), 商標は27,185件(前年度比+12.5%),著作権は86,989件(前年度比+30.4%),技術契約は2,401件(前年度比+62.2%),不正競争関係は2,286件(独占禁止の民事事件156件を含む,前年度比+4.8%), その他知的財産民事紛争事件5,316件(前年比+71.87%)であった。増加した件数では著作権が最も多く,増加した割合では技術契約およびその他知的財産民事紛争事件が顕著であった。
 行政訴訟事件では,第一審の受理件数は7,186件であり,その内,専利が1,123件,商標が5,990件,著作権が37件,その他行政事件が36件であった。第一審の既済件数は6,250件であり,第二審の受理件数は3,233件 (前年度比+44.0%)であり,既済件数は3,069件(前年度比+31.8%)であった。最高人民法院の受理件数は355件,既済件数は352件であり,昨年とほぼ横ばいであった。
 報告では,2016年度の特徴として以下の4点を挙げている。

(1)受理件数の増加
 民事,行政,刑事事件のすべての受理件数が増大しており,そのうち一審案件は152,072件(前年度比+16.8%)である。特に民事第一審の受理件数の増加率が前年度比+24.8%で最も高い。

(2)審理難度の上昇
 知的財産の事件において,特に複雑な技術的事実を含むものは審理難度が高く,近年は先端技術分野や新規複合技術の開発について分析難度の高い案件が増大している。例えば,北京市高級人民法院が判決を 下した「ヌクレオチド類似体を含む錯体又は塩及びその合成方法」発明専利無効宣告請求の審決取消事件2)は,マーカッシュ形式のクレームの複雑な医薬化学専利の問題に関連している。

(3)審理の質の安定および向上
 再審率が大幅に減少している。民事事件では第一審の既済件数が30.1%に上昇したが,第二審の差し戻し率が昨年並の5.9%であり,再審率は45%まで減少した。

(4)賠償額の増大
 市場価値を知的財産権の賠償額算定の参考とする事件が増えている。美容器の意匠権の侵害事件において,原告の請求を全面的に認め300万元の賠償を科した事例2)もある。また,北京市知識産権法院は “紫玉”商標権侵害事件および書生公司著作権侵害事件の上訴事件で原告の損害賠償請求の全額を認め,更に虚偽の陳述,証拠の毀損など,不誠実な行為に対し制裁を科した。

 この他,最高人民法院は今回の報告において司法改革の状況として南京や武漢などへの知財専門法廷の設置,専利法改正草案に関する国務院への法院としての意見提示など,様々な取り組みが紹介されている。

(参考ウェブサイト)
1)最高人民法院,中国法院知識産権司法保護状况(2016年)
http://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-42362.html

2)2016年北京市裁判所知的財産権司法保護10大典型事例にも選出された。
北京法院網,北京法院発表知識産権司法保護十大案例
http://bjgy.chinacourt.org/article/detail/2017/04/id/2820264.shtml

(URL参照日は全て2017年5月25日)

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