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〈中国〉「2016年度中国専利調査データ報告書」を発表

 国家知識産権局がこのほど,「2016年中国専利調査データ報告」を発表した。このような全国範囲での専利(特許,実用新案,意匠)調査結果の発表は昨年の「2015年中国専利調査データ報告」に続き2回目となる。
 調査で実際に配布した専利権者向けアンケート票は1万5,000票,専利情報アンケート票は4万3,000票,実質回収率は80%を超え,有効率は70%を超えた。今回の報告内容の要約版も発表されており,以下に紹介する。
  1. 専利権保護は需要が旺盛で,保護が一層強化
    1. (1)保護の需要は旺盛だが,保護に対する満足度を高める必要がある
      知的財産権保護について8割を超える専利権者は「段階的又は大幅に強化する必要がある」と考えている。また,政府の専利権保護活動に満足を示す割合はわずか56.2%であった。
    2. (2)専利権者は自主的な専利行政法執行の強化を望んでいる
      61.3%の専利権者は「専利管理機関が積極的に法執行を行い,権利侵害行為を取り締まることを望む」と回答し,前年に比べて0.9ポイント上昇した。
    3. (3)専利権侵害の割合は年々低下する傾向があるが,近年は若干高まっている
      2011年から2015年にかけて,専利権者が権利侵害に遭遇する割合は年々低下した一方,2016年には2015年に比べ若干上昇した。2016年を専利権者別(企業・大学・研究機関・個人)にみると, 研究機関と個人は,2015年に比べ低下したものの,企業と大学は2015年に比べ上昇した。
    4. (4)「挙証が難しい」が専利司法保護を制約する最も主要な要素
      専利権者が現在最も不満を感じていることのトップ3位は,「挙証が難しい」(専利権者の52.7%),「裁判期間が長い」(専利権者の34.3%),「判決の執行が難しい」(専利権者の27.6%)であった。
  2. 専利の実施率は緩やかに上昇,企業の専利実用化が進んでいる
    1. (1)中国における有効専利の実施率は6割を超え,企業の専利活用水準が最高に
      中国のおける専利の実施率は61.8%だった。専利権者別にみると,企業の専利の実施率は67.8%で最も高かった。
    2. (2)専利の実施率は専利保有件数に一定件数まで比例し,ピークを超えると低下する
      専利保有件数の増加に伴い,専利の実施率は上昇するが,ピークに達すると低下する単峰形分布を呈している。
    3. (3)企業の規模と専利の実施率は正比例関係を呈する
      大企業は専利実施の意欲が強く,または専利を実施しやすいともいえる。
  3. 中小・零細企業は専利権侵害リスクが高く,イノベーション成果の実用化が難しい
    1. (1)中小・零細企業は資金援助の取得に関して優位ではない
      研究開発活動が政府から援助を受ける割合が最も高いのは大企業で50.9%だったのに対して,最も低いのは中小・零細企業で35.7%だった。
    2. (2)中小・零細企業の技術イノベーションの成果は実用化が難しい
      大企業に比べて,中小・零細企業の専利は実施や実用化が難しい。また,企業の規模が小さいほど,資金の問題で技術イノベーション活動から収益を得ることが阻害されている。
(参考ウェブサイト)

1)「2016年度中国専利調査データ報告書」を発表
http://www.sipo.gov.cn/zscqgz/2017/201706/t20170630_1312349.html

2)「2015年度中国専利調査データ報告書」を発表
http://www.sipo.gov.cn/tjxx/yjcg/201607/t20160701_1277842.html

(URL参照日は全て2017年8月22日)

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