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〈中国〉損害賠償額算定に関する最近の動向

　中国の損害賠償の算定は，専利法第65条及び司法解釈［2015］４号第20，21，22条の規定に基づきまとめると以下の表の通りに整理される。
　

優先順位	算定方法	具体的計算方法	合理的支出の加算
①	専利権者の損害額	専利権者の専利製品販売数量減少数×専利権者の専利製品1個あたりの合理的利益又は，侵害者による専利侵害製品の市場販売総数× 専利権者の専利製品1個あたりの合理的利益	○
②	侵害者の取得した利益	侵害者による専利侵害製品の市場販売総数× 侵害者の専利侵害製品1個あたりの合理的利益	○
③	実施許諾料の倍数	人民法院は，専利権の種類，専利侵害行為の性質及び情状，専利許諾の性質，範囲，時間等の要素を考慮し，当該専利権の使用許諾料の倍数して，合理的に賠償金額を確定することができる。	○
④	法定賠償	人民法院は専利権の種類，専利侵害行為の性質及び情状等の要素に基づいて，専利法65条第2項に定める賠償金額(1万元以上100万元以下)を確定することができる。	○

　実務上では上記①②により算定した損害額の立証が困難な場合，及び使用許諾をしていないため上記③による算定が困難な場合，上記④による損害賠償額の算定が選択されることが多い。しかし，法定賠償による賠償金額の最大は100万元と比較的低額なため，損害賠償額という面では権利行使のメリットが見出し難いという問題がある。
　一方，上記①②による損害額を算定する際に，専利権者が算定した損害額自体は認められなくとも，法発［2009］23号第16条の「専利権者の損害額あるいは侵害により獲得した利益を証明する事が困難であるが，上記損害額が法定賠償の最高額を明確に超えている証拠を有している場合，全体を総合的に勘案し法定最高額以上の賠償額を確定しなければならない」との記載を根拠として，日系メーカーを原告，中国地場メーカーを被告とした争いにおいて北京高級人民法院が300万元の損賠賠償を認めた判例［（2016）京民終245号 2016年中国法院10大知識産権案件 No.6］や上海知的財産法院が550万元の損害賠償を認めた判例［2017年10月23日時点で判決文は非公開］もある。
また，中華人民共和国専利法改正草案（2015年12月２日発表）では，法定賠償額を10万元～500万元まで引き上げる規定，損害賠償額の立証を容易にすることを目的とした人民法院による帳簿の提出命令規定，故意侵害と認められる場合に最大３倍まで損害賠償額が増額される規定案が示されており（専利法第68条草案），損害賠償額算定の面において専利権者保護の強化が期待されている。

（参考）

史上最贵缝纫机－兼评上海某机电公司侵害兄弟工业株式会社发明专利权纠纷案（中国語）
http://www.pss-system.gov.cn/sipopublicsearch/portal/showUIContentDetail-showContentDetail.shtml?
params=991CFE73D4DF553253D44E119219BF31366856FF4B1522262FA5BBC8CD3E57403028E34AB967B
99C56CF4E74B25E6408B44BC433E4DF304DD92B0AEE4BC471D50751E5DEE2FD5C7659FB4B94A1E1545A
51E02730C0574CD913D0A260E6A53C45

（参照日：2017年10月16日）

（注）｢アジア・オセアニア特許情報｣は，最新とは言えない情報も含め，会員に有用と思われる情報を掲載しています。内容については正確を期したつもりですが，二次情報もあり，必ずしも情報源への確認が充分と言えない場合があります。詳細については会員各位にてご確認下さい。

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