専門委員会成果物

アップルのデザイン特許の追加的損害賠償410億円判決が差し戻された事例

米国最高裁判決 2016年12月6日
Samsung Electronic Co., LTD., et al. v. Apple Inc.事件

[経緯]

2011年,Apple Inc.(A社)は,Samsung Electronic Co., LTD.(S社)のスマートフォンに対し,3件のデザイン特許(D593,087,D618,677,D604,305)に基づいて侵害訴訟を提起した。地裁では, A社の主張が認められ,S社に対して3億9,900万ドル(約410億円)の損害賠償の支払いを命じた。その後,S社がCAFCへ控訴したが,CAFCは地裁の判断を支持した。
地裁およびCAFCでの賠償額の算定に際して,特許法第289条のデザイン特許についての追加的救済(additional remedy)「侵害者は…,特許デザインを利用している製造物(article of manufacture) の総利益(total profit)を限度として支払う」という規定が使われた。これに基づき,A社の「S社の特許デザインを利用している製造物はスマートフォン全体を指し,賠償額はその総利益に関する」 という主張が認められた。
これらの判断に対し,S社が最高裁に上告した。

[最高裁の判断]

最高裁は,上記地裁およびCAFCの判断を覆す判断をした。
最高裁は,特許法第289条における「製造物(article of manufacture)」は,顧客に販売される製品(全体)とその製品の部品(一部)との両方を含む広い文言であるとし,CAFCの狭い解釈には同意できないとした。
また,最高裁は,それぞれのデザイン特許がスマートフォン全体かスマートフォンの一部の部品かのいずれかに関連するかの検討およびそれに基づく損害賠償額の算定は行わず,CAFCがそれらを行うよう差し戻すと判断した。

(亀井 晃)

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