専門委員会成果物

完全子会社が締結した合意における「関連会社」に,親会社が含まれると判断された事例

CAFC判決 2017年1月26日
Securus Technologies Inc. v. Global Tel*Link Corporation

[経緯]

Securus Technologies Inc.(S社)は,自身の特許権侵害について,Public Communications Services, Inc.(P社)を提訴した。この訴訟は,S社が,2014年9月まで,「P社及びP社の関連会社(affiliates)」を S社の特許権侵害で訴えないという合意(以下,「本合意」という)を含む和解によって,2009年に終了した。その後,2010年に,P社は,株式購入によってGlobal Tel*Link Corporation(G社)に取得され, G社の完全子会社となった。その3年後に,G社はS社から侵害訴訟を提起された。
S社が提起したこの侵害訴訟に関し,G社は,G社が「P社の関連会社」であるとして,本合意の内容について主張した。地裁は,S社が提起した侵害訴訟の略式判決において,G社がP社の関連会社で あることを認め,G社がS社の侵害訴訟の対象から除外されると判示した。
 これを不服として,S社はCAFCに控訴した。

[CAFCの判断]

CAFCは,S社の控訴について,地裁の略式判決を支持した。
本控訴において,S社は,本合意では,「関連会社」,「子会社」及び「親会社」各々について記載が分けられている箇所があるため,本合意における「関連会社」に「親会社」は含まれないと主張した。
これに対し,CAFCは,法律的な文書(遺言,販売契約,放棄など)では,目的の対象が隙間無くカバーされるように,重複する言葉を用いることは珍しい事ではないとし,S社が主張する「関連会社」, 「子会社」,及び「親会社」の記載分けは,この役割を担うものであると示した。
また,S社は,一般的に受け入れられている意味において「関連会社」は「親会社」を含まない,とも主張した。
これに対し,CAFCは,テキサス州裁判所が契約書で未定義の用語を解釈する際に使用するBlack’s Law Dictionary において「親会社」は「関連会社」に含まれること,及び,テキサス州当局の確認結果や テキサス州裁判官の適用事例などにおいて,「関連会社」に「親会社」が含まれる点,を示した。
以上より,CAFCは,「関連会社」という用語の一般的定義及びテキサス州法の適用原則の下,P社の親会社であるG社が本合意における「関連会社」としての資格を有すると判断した地裁の略式判決を支持した。

(吉田 真志)

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