専門委員会成果物

CBM Reviewの対象特許の定義に対してその範囲を狭める新たな解釈を示した事例

CAFC判決 2017年2月21日
Secure Axcess, LLC. v. PNC Bank National Association, et al.

[経緯]

 Secure Axcess, LLC.(S社)の,ウェブページの認証技術に関する特許7,631,191(’191特許)の侵害で提訴を受けたPNC Bank National Association他は,’191特許の有効性を争って, 金融商品・サービス関連のビジネス方法特許に関するCovered Business Method(CBM)Reviewを申請した。これに対し,米国特許庁の審判部(PTAB)は,’191 特許はCBM Reviewの対象特許(CBM特許)であり, クレームは非自明性が無いとの決定を下した。

[CAFCの判断]

 S社からの上訴を受けたCAFCは,PTABがCBM特許の法定の定義(a patent that claims a method or corresponding apparatus for performing data processing or other operations used in the practice … of a financial product or service)の範囲を適切に理解していないとして,PTABの決定を覆し,’191特許はCBM特許ではないと判断した。
 即ち,CAFCは,CBM特許であるかの決定においてPTABが採用した,“the method and apparatus … perform operations used in the practice … of a financial product or service and are incidental to a financial activity”という判断基準において,“and are incidental to a financial activity”の部分は,上記の法定の定義には含まれないことから,PTABの判断基準はCBM特許の法定の定義の 範囲を超えるものであると判断した。
 また,CAFCは,CBM特許であるかの決定においてPTABが,特許権者がその特許の訴訟相手に多くの金融機関を選択したという訴訟履歴を参考にした点も誤りであると判断した。
 その上でCAFCは,CBM特許の法定の定義に対して,その範囲を狭める新たな解釈を示した。即ち,他の解釈では,法定の定義の範囲が事実上無制限となり,金融商品・サービスの運用に使用され得る, あらゆる特許がCBM特許となるとの理由から,CBM特許の法定の定義は,クレームが金融活動を示す構成要素(financial activity element)を含むことを要求すると解釈した。
 一方,Lourie判事は,上述のCAFCの判断に対し明確な反対意見を示し,CBM特許の法定の定義は“used in the practice”と規定するのみであり,クレームに明記がなくても,明細書の記載 (written description)や訴訟履歴から金融商品の運用に使用されるものであることが明確であれば,その特許はCBM特許であるとの意見を述べた。

(吉田 晴信)

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