専門委員会成果物

被告の損害賠償を決めるために,原告と別会社の和解契約が証拠として用いられたことが,CAFCにより支持された事例

CAFC判決 2017年3月6日
Prism Technologies LLC v. Sprint Spectrum L.P., DBA Sprint PCS

[経緯]

 Prism Technologies LLC(P社)は,米国特許8,127,345および8,387,155を侵害するとして,Sprint Spectrum L.P., DBA Sprint PCS(S社と総称)を提訴し,さらに,AT&T Mobility LLC(A社)を地裁へ提訴した。 A社は,公判の最後にP社と和解した。
 S社は,(A)P社の専門家証人の排除の申立て,(B)地裁がP社とA社の和解契約をS社の訴訟の証拠として用いるのは認められないとの申立て,を行ったが,地裁は,(A)および(B)の申立てを拒否した。
 そして,陪審員は,P社に3,000万ドルのreasonable royaltyの損害賠償を与えると決定した。これに対し,S社は,(C)法律問題としての判決(judgment as a matter of law)および再審の申立てを地裁へ行った。 また,P社は,(D)判決後の実施料について追加の金銭的救済の申立てを行った。
 地裁は,(C)および(D)の申立てを拒否した。これら(A)〜(C)の申立てを地裁が拒否したことについてS社はCAFCへ控訴し,(D)の申立てを地裁が拒否したことについてP社はCAFCへ交差控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,(A)〜(D)に対して,地裁の判断を支持した。 (B)について,CAFCは,Rule 403(Rule 403 of Federal Rules of Evidence)に従って,もし,(a)不公正な不利益,(b)争点の混乱,(c)陪審員の判断をミスリード,(d)過度の遅延,(e)時間の浪費, (f)不必要に提示が重複する証拠,などのリスクの中で,1つのリスクでも和解契約の証明力よりも実質的に上回った場合に,地裁は関連する証拠を除外しても良いとした上で,地裁の判断を支持した。
 訴訟の和解契約を証拠として認めるとした上で,P社が,A社との和解契約の内容,A社とS社とのそれぞれについてP社の特許技術の使用比較などの証拠を提出したのに対し,S社は根拠を示すことができなかった。

(山代 大輔)

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