専門委員会成果物

Alice最高裁判決の2ステップテストに基づいてシステム関連発明を特許適格性がないとの判断を維持した事例

CAFC判決 2017年3月13日
In Re:Angadbir Singh Salwan

[経緯]

 発明者:Dr. Salwan(S氏)は,ネットワーク内で患者の健康に関する情報を転送する方法に関する米国特許出願12/587101(’101出願)を行った。そのネットワークには,医師,患者,医療製品サプライヤー等が アクセスできる。ユーザーは,そのネットワークを用いて,スケジュール管理,各種フォーム記入,保険請求,患者への課金,医師や他の患者とのコミュニケーション,患者への広告,医療製品の販売等をすることができる。
 2015年1月7日,審査官は,’101出願に対して,(1)35 U.S.C.§101,(2)35 U.S.C.§112,(3)35 U.S.C.§103(a)を根拠にFinal Rejectionを下した。これに対して,S氏は,PTABへ審判を請求し,PTABは, §101に基づく拒絶に関して’101出願のクレーム1は患者宛の請求書を計算する類の基本的な経済活動(fundamental economic practices)であり抽象的概念に相当するなどとして,審査官の判断を維持した。これを受けて, S氏はCAFCに控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,PTABの判断をde novo基準で,初めから再検討した。
 クレームが特許として適格性を有するか否かは,Alice最高裁判決の2ステップテストを適用される。
ステップ1では,CAFCは,クレームが特許として適格性を有しないコンセプト,例えば,自然法則,自然現象,抽象的概念に向けられたものであるか否か検討する。
 そして,ステップ1にて,クレームが特許適格性を有しないコンセプトに向けられたものである場合,ステップ2に進む。
 ステップ2では,クレームされた抽象的概念を,特許適格性を備える出願にまで「変換」するに十分な「発明概念」が含まれているか否か決めるためにクレームの構成要件を検討する。
 なお,最高裁は,一般的にコンピュータを単に詳述しただけでは,抽象的概念を,特許適格性を備える発明に変換することはできないとしている。
 S氏は,上記ステップ1に関して,’101出願に係る患者の請求書の計算等は理論的概念ではないことを理由に,抽象的概念に該当しないと主張した。CAFCは,たしかに,それらは理論的概念ではないかもしれないが, 基本的な経済活動,従来の経済活動にすぎず本件はステップ1に該当するとした。
 また,S氏は,上記ステップ2に関して,’101出願に係る「ネットワーク」,「プログラム」,「サーバー」等の具体的システムによって初めて,従来不可能な効率的な伝達ができることを主張した。 しかし,CAFCは,クレームがよく知られた経済活動に向けられている場合,クレームの構成要件を一般的な「ネットワーク」等としたとしても,抽象的概念を,特許適格性を備える発明に変換するには不十分であるとした。
 以上,CAFCは,’101出願に係るクレームは特許適格性を満たさないとして,PTABの判断を維持した。

(淺井 法廣)

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