専門委員会成果物
特許侵害訴訟において，懈怠の抗弁を否定した事例
CAFC判決 2017年３月21日SCA Hygiene Products Aktiebolag et al. v. First Quality Baby Products, LLC et al.
［経緯］
2003年に，SCA Hygiene Products Aktiebolag（Ｓ社）は，First Quality Baby Products, LLC（Ｆ社）に対して成人用失禁製品に関するＳ社の米国特許6,375,646（’646特許）を侵害していると主張した。 これに対し，Ｆ社は，’646特許が無効であると反論した。これを受けて，2004年にＳ社は’646特許の再審査を請求し，2007年にUSPTOは’646特許が有効である旨の審決を下した。そして，2010年にＳ社は’646特許に 基づいて，Ｆ社に対して特許侵害訴訟を提起した。連邦地裁は，Ｆ社が申立てた衡平法上の禁反言と懈怠の抗弁を認めた。
Ｓ社はこの判決を不服とし，CAFCに控訴し，著作権法の損害賠償請求の時効（侵害から３年間）に対して懈怠の抗弁を認められなかったPetrella v. Metro-Goldwyn-Mayer, Inc.事件（Petrella事件）の最高裁の判決に基づき，35 U.S.C. w286の損害賠償回収期間（提訴から６年遡った期間）に対しても著作権法の損害賠償請求の時効と同様に懈怠の抗弁は認められるものではないと主張した。しかしながら，CAFCは連邦地裁の判決を支持し，上記損害賠償回収期間に対しては懈怠の抗弁を認めた。
Ｓ社はこの判決を不服とし，最高裁に上訴した。
［最高裁の判断］
最高裁は，CAFCの判決を覆し，損害賠償回収期間に対しても著作権法の損害賠償請求の時効と同様に懈怠の抗弁は認めないと判決した。主な判断理由は，�『菎佞旅格曚鯒Г瓩疹豺隋の�法が与えた制限された損害賠償回収期間を無効化する権限を判事に与えることになる点，��著作権法の侵害から３年間の損害賠償請求の時効の考え方は，損害賠償回収期間の考え方と同じであるためPetrella事件の判決を適用できる点，��35 U.S.C.§282（b）（1）に定める抗弁に，懈怠の抗弁が含まれると仮定しても，原告が権利を行使せず放置した場合において，被告に対し35 U.S.C.§286の損害賠償回収期間と，35 U.S.C.§282条（b）（1）の懈怠の抗弁の２重の保護は認めない点であった。
（桑野 陽一郎）
