専門委員会成果物
実質的な証拠が評決を支持するとし，非侵害と無効の地裁判断を認めた事例
CAFC判決 2017年３月21日TVIIM, LLC v. McAfee, Inc.
［経緯］
TVIIM, LLC（Ｔ社）がMcAfee, Inc.（Ｍ社）を，自己の特許6,889,168（’168特許）を侵害するとして提訴した。陪審は，非侵害と無効の評決をした。評決後，Ｔ社は法律問題としての判決（JMOL）と 新たな公判とを求める申立てをしたが，地裁は当該申立てを拒否した。そこでＴ社は，上記評決および当該拒否を不服として控訴した。［CAFCの判断］
CAFCは，クレーム用語の均一な解釈による非侵害と無効の評決が実質的な証拠に支持され，かつ新たな公判の拒否に地裁の濫用がなかったとし，地裁の判断を支持した。詳細は下記�，�ら��の通りである。
�．�レーム用語は，無効と侵害の判断において何れの場合も同じ方法で解釈されねばならない（Amgen Inc. v. Hoechst Marion Roussel Inc.）。一般的に地裁による一つの「平易かつ通常の意味」の決定は，
クレーム用語に一つ以上の意味があるときに不十分であり得る（O2 Micro Int’l Ltd. v. Beyond Innovation Tech. Co.）。
Ｔ社は，クレーム用語に一つ以上の通常の意味があるから，非侵害と無効について不整合な評決がされたと主張した。ただし，公判中にＴ社は，上記用語に複数の通常の意味があることも解釈が変わり得ることも
示さなかった。
CAFCは，’168特許のクレーム用語に複数の通常の意味があると認めず，地裁が陪審に特定の説示なしでクレーム解釈を与えたことに誤りがないとした。
�▲�レーム用語「As A Result Of/In Response To」は，修正実行と脆弱性との間に因果関係を要求する。非侵害の観点から，Ｍ社のProgram Updatesには，修正実行と発見された脆弱性との間に
因果関係がない。無効の観点からは，検出された脆弱性に応じて修正実行を開始することを記載する先行例が存在する。
クレーム用語「Various Utility Functions」について，非侵害の観点から，Ｍ社のProgram Updatesはソフトウェアアップデートをダウンロードする単一機能のみ実行する。無効の観点からは， 種々のユーティリティを実行する先行例や，少なくとも所有権とパーミッションを修正する先行例が存在する。
クレーム用語「Reporting The Discovered Vulnerabilities」について，非侵害の観点から，Ｍ社のProgram
Updatesは，リスクレベルをユーザーに報告するものの，脆弱性について何ら具体的情報を 報告しない。リスクレベルは「発見された脆弱性を報告」することに該当しない。Program
Updatesが［Common Vulnerabilities and Exposures］番号や脆弱性の具体的説明を報告しないからである。
無効の観点からは，検出された脆弱性について具体的報告をユーザーに提供する先行例が存在する。
以上からCAFCは，均一なクレーム解釈により無効と非侵害の評決がされ，かつ，実質的な証拠が評決を支持するとした。
�９義覆砲△燭蝪埃劼蓮ぜ村租�な証拠が非侵害と無効の一方の評決を支持すると認め，Ｔ社弁護士は公判で，侵害の事実問題が存在すると述べた。Ｔ社のこの自認により，CAFCは，どんな単一な 通常の意味解釈のもとでも陪審が到達した無効の結論は適切であり，この結果，非侵害の評決に瑕疵があってもそれは無害であるとした。
（山口 薫）
