専門委員会成果物

否定的表現を含むクレームの解釈が争点となった事例

CAFC判決 2017年4月18日
Intellectual Ventures II LLC v. Ericsson Inc., et al.

[経緯]

 Intellectual Ventures II LLC(I社)が保有する可変帯域幅無線通信システムに係る特許7,787,431(’431特許)に対し,Ericsson Inc.(E社)は,’431特許のクレーム1,2,8-12及び18-22が 4つの引例の組み合わせから自明であるとしてIPRを申請した。
 PTABは,クレーム1及び2は自明であり特許を無効とする決定を下した。
 これを不服としてI社は,CAFCに控訴した。

[CAFCの判断]

 IPRでは,引例を組合せる動機づけが存在したかどうか,及び,クレーム1の文言の解釈が主な争点となったがCAFCはPTABの決定を全面的に支持した。
 まず,引例を組合せる動機付けについては,2つの引例を組合せることにより,一方の引例に開示された発明の目的の一部が達成できなくなるとしても,そのこと自体が引例を組合せる動機付けを 阻害することにはならないとするPTABの決定を支持した。
 クレームの文言の解釈については,IPR手続きにおいてPTABは,’431特許のクレーム1の要件である「中心帯域幅は,操作帯域幅よりも実質的に広くない」の「実質的に広くない」の意味は, 「実質的に同じか,より狭い」と同じ意味であるとし,従って「中心帯域幅は,操作帯域幅よりも実質的に広くない」との文言が,近似を含むものであることから,引例の組み合わせから得られた 「中心帯域幅は,操作帯域幅と同じである」ことを除外しないと判断した。
この控訴審においてI社がこれに対する反論をしなかったことから,クレーム1は,引例の組み合わせから得られた要件を含むものとするIPRの決定が維持された。
 最終的にCAFCはPTABの結論に誤りはなかったとして,’431のクレーム1及び2は自明であるとするPTABの判断を支持する決定を下した。

(大須賀 皓也)

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