専門委員会成果物

控訴人は新たなクレーム解釈の議論をする権利を放棄したとして,CAFCがPTABの判断を支持した事例

CAFC判決 2017年3月28日
Google, Inc. V. SimpleAir, Inc.

[経緯]

 Google, Inc.(G社)は,特許権者SimpleAir, Inc.(S社)のデータ転送方法に関する特許8,601,154(’154特許)に対し,先行文献に基づいて自明であるとしてIPRを申請した。
 PTABは,BRI(Broadest Reasonable Interpretation)基準に基づいてクレーム解釈を行い,G社が提出した先行文献は,「『複数の』情報源からデータを受信する中央放送サーバ」というクレームの限定を 開示していないとして特許性を維持した。
 G社は,PTABがBRI基準でのクレーム解釈を誤っており,上記限定は,「『一つ以上の』情報源からデータを受信する中央放送サーバ」と解釈すべきとしてCAFCへ控訴した。

[CAFCの判断]

 G社はIPR手続において,BRI基準に基づいてクレームは広く解釈されるべきとの曖昧な主張をしていたが,新たなクレーム解釈は提示せず,もしPTABが「『複数の』情報源からデータを 受信する中央放送サーバ」というクレーム解釈を採用したとしても,G社が提出した先行文献は相当する技術を開示していると主張していた。
 CAFCは,G社がIPR手続中にPTABのクレーム解釈に対して反対を表明しているようには見えず,新たなクレーム解釈の提示もしていないこと,さらに,口頭弁論においてG社は,PTABが「『複数の』 情報源からデータを受信する中央放送サーバ」というクレーム解釈を採用しても良いと発言していたことから,G社は新たなクレーム解釈の議論をする権利を放棄したと判断し,放棄の法理 (the doctrine of waiver)に基づいてG社の主張を退け,PTABの判断を支持する決定を下した。

(田中 成治)

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