専門委員会成果物

PTABの特許有効性に関する判断が地方裁判所の決定に基づく必要がないことをCAFCが確認した事例

CAFC判決 2017年4月4日
Novartis AG, Lts Lohmann Therapie-Systeme AG v. Noven Pharmaceuticals Inc.

[経緯]

 Novartis AG, Lts Lohmann Therapie-Systeme AG,(AG社)は,アルツハイマー病治療のための医薬組成物(抗酸化剤を含むリバスチグミン)に係る特許6,316,023および6,335,031の特許権者であり, そのジェネリック版を製造したNoven Pharmaceuticals Inc.(INC社)に対して,地裁において特許侵害訴訟を提起した。地裁は,GB2,203,040A「Enz」,JP59-184121「Sasaki」およびその他参考文献により AG社特許は自明であるとのINC社の主張に対し,「Enz」と「Sasaki」を組み合わせる動機がなく自明ではないとし,特許の有効性を認める判断を下した。
 一方,INC社がAG社の特許は自明であるとしてIPRを申し立てた結果,PTABはINC社の主張を認める判断を下した。
 AG社は,PTABの判断は地裁の判断に基づくべきであり,不適切であるとしてCAFCに控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,地裁では提出されなかった専門家証言があったことに加え,自明性を証明する基準がたとえ同じ証拠であったとしても,地裁(clear and convincing evidence)とPTAB(preponderance of the evidence)では異なることから,PTABは地裁の判断に基づく必要はないと結論を下した。
 以上より,CAFCはPTABの判断を支持し,AG社の特許は自明であり,特許性を有さないと判示した。

(辻内 幹夫)

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