専門委員会成果物

血液サンプルを用いた診断方法の特許に関し,米国特許法101条の特許不適格性が認定された事件

CAFC判決 2017年6月16日
The Cleaveland Clinic Foundation, Cleaveland Heartlab, Inc. v. True Health Diagnostics LLC

[経緯]

 Cleaveland Clinic Foundation(C社)の研究者は,動脈損傷又は炎症により体内から放出されるMPO(Myeloma peroxidase)を指標とした心臓血管疾患の患者リスクを評価する方法(MPO試験) を開発した。C社は,本技術に関し,患者リスクの評価方法及び患者の決定方法の各特許を取得している。True Health Diagnostics LLC(T社)は診断技術に関する研究会社であり,C社とMPO試験の実施に関して 契約を結んでいたHealth Diagnostics Lab.の資産を買収し,独自でMPO試験の実施を開始した。
 これに対し,C社は方法特許に基づき,T社の特許権侵害を主張した。しかし,地裁は,当該特許は自然現象である血中MPO値と心臓血管疾患の相関を示すに過ぎないとし,特許法101条の特許適格性を満たさないと判断した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,特許法101条の判断において,Alice最高裁判決に基づく2段階ルールを適用し,該方法特許は特許不適格であると判断した。前記2段階ルールでは,第1ステップとして,発明が抽象的な アイデア,自然法則,自然現象又は自然の産物(自然現象等)に該当するか否かを判断し,該当する場合には,更に第2ステップとして,自然法則等にそれ以外の要素を個別に又は組み合わせて 勘案することで,発明が自然法則等以上のものになり得るか否かを判断する。
 第1段階では,血液サンプル中のMPO値の上昇と心臓血管疾患との間に相関があること自体自然法則であり,更に該発明は自然に存在するMPO値の範囲内でその相関を観察するに過ぎないことから, 本発明は自然法則自体を示すものであると判断した。
 第2段階では,C社の方法特許は,MPOの検出方法又はMPOの比較値に関し新たな手法は開示せず,Ariosa最高裁判決と同様,該発明は慣習的方法に依拠して血中のMPO値を統計的方法により 得られた既知のMPO値と比較したに過ぎないと判断した。
 以上より,CAFCは,該方法特許は,自然法則から特許適格な発明へと変換するに足る十分な発明コンセプトを含まず,特許不適格であるとする地裁の判断を支持した。

(加藤 義裕)

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