専門委員会成果物

ウェブサイトを介してビジネスを行っている事業者の行為に,特別管轄権が認められなかった事例

CAFC判決 2017年6月19日
NexLearn, LLC v. Allen Interactions, Inc.

[経緯]

 NexLearn, LLC(N社)はコンピュータプログラムに関する特許を保有している。一方,ミネソタ州に本社を置くAllen Interactions, Inc.(A社)は,シミュレーションソフトZebraZappsを ウェブサイトで宣伝広告し,販売している。N社は,A社の上記行為を特許侵害でカンザス州連邦地裁に訴えた。しかし,同地裁は人的管轄権(personal jurisdiction)の一つである特別管轄権 (specific jurisdiction)を認めず,N社の訴えを却下した。
 N社はこの決定を不服として,CAFCに控訴し,カンザス州に於いても特別管轄権がある旨を主張した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,A社の行為と法廷地州(forum State)であるカンザス州との間に最低限の関連(minimum contact)は無いと判示した。結論として,CAFCは特別管轄権を認めず,地裁の判決を支持した。
 CAFCは,カンザス州におけるA社の「最低限の関連」を証明するには,A社が意図的にカンザス州でウェブサイトを利用している証拠を示す必要があるとして,地裁では「最低限の関連」とは無関係と 判断していたA社の行為(以下2点)を,「最低限の関連」を立証するには不十分な証拠と認定し,特別管轄権を認めなかった。
 第一の行為:A社はカンザス州に在住するN社の社員にZebraZappsに関する宣伝広告のe-メールをメーリングリストによって送信していた。CAFCは,このe-メールにはZebraZappsに対する 販売申出の記載はなく,このe-メールは「最低限の関連」を立証するには不十分な証拠であると判断した。
 第二の行為:A社はカンザス州に在住するN社の社員に対してZebraZappsの“無料トライアル”の申出をしていた。CAFCは,法廷地州における“販売”がアメリカ全土における 無数の販売の内,たった1つの場合,特別管轄権を認める事はできない(Katz v. Ladd Uniform Co.)として,このA社による個別の“無料トライアル”の申出は「最低限の関連」を 立証するには不十分な証拠であると判断した。

(青柳 成則)

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