専門委員会成果物

米国特許侵害訴訟の弁護士費用の敗訴側負担の申立(特許法285条)において,CAFCが地裁の否認は裁量権の濫用に当たるとし,棄却,差し戻した事例

CAFC判決 2017年7月5日
AdjustaCam, LLC v. Newegg, Inc., et al.

[経緯]

 AdjustaCam, LLC(A社)はカメラの周辺機器に関する特許5,855,343(’343特許)の専用実施権者であり,2010年7月,Newegg, Inc., Newegg.com, Inc., Rosewill, Inc.(総称してN社)及び その他に対し,’343特許に基づき,特許侵害訴訟を提訴した。但し,A社はN社以外の会社と,マークマン決定(Markman order)前後で和解しており,N社のみに対して訴訟を継続した。しかし, 略式判決の直前にA社はN社に対する訴訟を取り下げた。2012年10月,N社は,A社が悪意を以って客観的に根拠もなく訴訟を提訴したとして,特許法285条(The court in exceptional cases may award reasonable attorney fees to the prevailing party.)における“exceptional case”に相当するとし,弁護士費用をA社に請求する申立を行ったが,地裁はexceptional caseに相当しないとして否認した。
 N社はこの決定を不服として,CAFCに控訴した。CAFCは,地裁の否認を棄却,差し戻し,Octane事件の最高裁判決(O判決)における特許法第285条のexceptional caseの判断基準を踏まえ再検討する よう指示したが,地裁は同じ理由で再度否認したため,N社は再びCAFCに控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,O判決がexceptinal caseの判断基準を“当事者間の訴訟上の立場の強弱,又は,訴訟の不合理さに関し,他の訴訟事例に比べ異例である”と指摘したことに触れた上で, 地裁が前回の控訴時にCAFCが指示したO判決を踏まえた再考を怠り,かつ,事実認定を誤認していることを指摘した。また,CAFCは,地裁がA社の“マークマン決定後の根拠のない訴訟の継続”, “開示手続きにおける手続きの間違い”,“算出方法に根拠が無い賠償額の要求”といった行為を間違って評価したと指摘した。
 以上のことから,CAFCは,地裁の否認が裁量権の濫用に当たると判決し,再度棄却,再度差し戻した。

(川部 浩俊)

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