専門委員会成果物
先行技術に開示，教示がないと判断した理由が十分に説明されていないとして差戻しが認められた事例
CAFC判決 2017年７月10日Google Inc. v. Intellectual Ventures II LLC
［経緯］
Intellectual Ventures II LLC（Ｉ社）はタッチスクリーン上にキーボード等のキーを重ねて表示するタッチスクリーンシステムに関する特許6,121,960（’960特許）の権利者である。 ’960特許のクレーム１はビットレベルでバイナリー値を操作する論理演算器を構成要件として含んでいる。Google Inc（Ｇ社）は，先行技術の米国特許5,638,501（Gough）及び米国特許6,118,427（Buxton）は上記論理演算器を開示しており，’960特許は無効であるとしてIPRを請求した。 特許審判部（PTAB）は，先行技術は論理演算器を開示，教示しないとして，クレーム１及びそれに従属するクレームは有効との最終決定を下した（IPR2014-00787）。
これに対しＧ社は，PTABは先行技術が論理演算器を開示，教示しないと判断される理由を十分に説明していないとしてCAFCに控訴した。
［CAFCの判断］
Icon Health & Fitness, Inc. v. Strava, Inc, 849 F.3d 1034, 1043（Fed. Cir. 2017）で確認された通り，��PTABは必要な認定をしなければならず，また，その認定の基礎となる 証拠が十分なものでなければならない。また，��PTABは関係のあるデータを吟味して，PTABの行動を明確で十分に説明しなければならない。しかし，PTABは先行技術のGough及びBuxtonが論理演算器を開示， 教示しないと判断される十分な理由を説明していないと判示し，クレーム１及びそれに従属するクレームは有効との審決を破棄し，事件を差し戻した。（柳澤 健一）
