専門委員会成果物

既知のインターネット技術を利用したデータ処理方法に関する発明が特許不適格と判断された事例

CAFC判決 2017年7月27日
Audatex North America, Inc. v. Mitchell International, Inc.

[経緯]

 Mitchell International, Inc.(M社)は,Audatex North America, Inc.(A社)が保有する,自動車保険金の請求処理において損害車両の評価報告書を取得する方法に関する特許2件を対象にCBM審査を請求した。 審査の結果,PTABは特許法101条による不適格主題および特許法103条による自明を理由に特許無効の判決を下した。
 A社はこれを不服として控訴したが,CAFCはPTABの判決を支持し,特許法101条における抽象的主題に該当するとして対象特許の無効を判決した。

[CAFCの判断]

 特許適格性の判断には,Alice判決における2段階判断手法が用いられた。このテストの第1ステップではクレームが司法例外(自然法則,自然現象または抽象的概念)を対象としているか否かが判定され, 第2ステップでは追加要素を考慮した上でクレームが全体として司法例外を超越するか否かが判断される。
 第1ステップに関して,A社は,発明がインターネットサービスプロバイダ(ASP)を含む具体的なコンピュータ関連技術の改善方法を示しているとしてクレームの非抽象性を主張した。しかしCAFCはこれを認めず, クレームはコンピュータの動作に具体的な改善をもたらすものではなく,一般的なコンピュータと汎用コンポーネントを用いてデータ収集しレポートを作成するという抽象概念と見做されると結論した。
 次に第2ステップについて,A社は,クレームが技術基盤を改善するもので,また全体として従来の活動以上の構成となっていると主張した。しかしCAFCはこれを退け,提案されたクレームは技術基盤を改善する ものではなく,むしろ抽象プロセスの処理速度や効率を高める目的でのインターネットの利用を示唆しており,さらにクレームには一般的なコンピュータ構成が示されているに過ぎず,したがって提案されたクレームは 従来および汎用技術の使用による結果を上回る効果をもたらすものではないと結論した。

(田中 泰明)

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