専門委員会成果物

CAFCがディスカバリーにおける不正行為に基づいて不衡平行為の欺く意図を認定した地裁の判断を支持した事例

CAFC判決 2017年7月27日
Regeneron Pharmaceuticals, Inc. v. Merus N.V.

[経緯]

 Regeneron Pharmaceuticals, Inc.(R社)は,Merus N.V.(M社)がR社の特許8,502,018(’018特許)を侵害しているとして,M社を地裁に訴えた。M社は,’018特許の審査経過において, R社が重要(but-for material)な4つの文献についてPTOを欺く意図(specific intent to deceive)を持ってPTOに開示しなかったとして,不衡平行為に基づく権利行使不能との反訴を提起した。
 地裁は,上記文献について,but-for materialを認定したが,specific intent to deceiveに関するトライアルを開かなかった。
その代わり,地裁は,訴訟中のR社のディスカバリーにおける不正行為に基づいて,R社はPTOを欺く意図を持って上 記文献をPTOに開示しなかったとの不利な推論を導いた。
その結果,地裁は,’018特許を不衡平行為に基づき権利行使不能と結論づけた。R社は控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,クリアエラー基準で地裁のmaterialityとintentの認定を検討した。また,これらの事実に基づく不衡平行為の認定が裁量権の乱用に該当するかを検討した。
 その結果,CAFCは,but-for materialに関し,合理的に最も広い解釈において,地裁は適切に判断したと認定した。また,intentに関しても,地裁にはディスカバリー義務違反に対し,適切な制裁を科す 際に広い裁量権が認められていることを確認した。そして,R社のwidespreadな訴訟における不正行為の観点で,PTOを欺く意図を持って上記文献をPTOに開示しなかったとの不利な推論を導くことは裁量権を 濫用しなかったと結論づけた。
 上記の通り,CAFCは,地裁の決定を支持した。

(野村 亮介)

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