専門委員会成果物

特許審判部の拡大合議体によって,先の請願(IPR Petition)への併合(Joinder)に関する時期的制限の例外規定が広く認められると判断された事例

CAFC判決 2017年8月22日
Nidec Motor Corporation v. Zhongshan Broad Ocean Motor Co. LTD., et al.

[経緯]

 Zhongshan Broad Ocean Motor Co. LTD.(Z社)は,Nidec Motor Corporation(N社)が保有する低ノイズHVACシステムに関する特許7,626,349(’349特許)に対して,二つの当事者系レビューを請願した。 一つ目の請願(請願A)は,「先行文献“Bessler”と“Kocybik”との組み合わせにより自明である」と理由付けられており,続いて,二つ目の請願(請願B)は,「先行文献“Hideji”により新規性欠如」 と理由付けられていた。
 特許審判部は,請願Aに関しては,審理の開始を認めた。一方,請願Bに関しては,Hidejiの翻訳文に対する「正確さ」を証明する宣誓供述書をZ社が提供しなかったとして,審理の開始を拒否した。
これを受けて,Z社は,上記宣誓供述書も含めた当事者系レビュー(請願C)を請願し,かつ,請願Aと併合することを特許審判部に要求した。しかし,3人の審判官による合議体は, Z社宛ての特許侵害訴状の送達日から1年以上が経過していたため,時限的制限に関する特許法第315条(b)に規定される期限に間に合わなかったとして,審理の開始を拒否した。また, この例外規定の特許法第315条(c)に関しても,すでに当事者である手続きに対して争点を併合することは許可されていないとして,合議体は,当該例外規定を本事案に適用しないと決定した。
 その決定を受けてZ社は,特許審判部に再審理を要求した。この要求を受けて特許審判部は,5人の審判官による拡大合議体を召集した。拡大合議体は,「上記例外規定は,すでに当事者で ある手続きに併合する場合も許可している」とし,請願Aと請願Cを併合することを認めた。そして,当該併合手続の中で,’349特許のクレームは,新規性無し,及び自明であるとして,特許無効である旨を決定した。
 その判決を不服としてN社は,特許審判部の併合に関する判断,及び新規性・自明性に関する結論に対して,CAFCに控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,特許審判部の併合に関する判断が影響しない「自明であるから特許無効」の結論のみを支持した。
 なお,CAFCは,この判決に於いて,特許審判部の自明性に関する結論のみ議論したため,特許審判部の新規性に関する結論や併合に関する判断については判示されていない。

(辰己 正英)

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