専門委員会成果物

IPRにおいて特許権者が提出した補正後クレームの特許性を申立人が立証すべきであるとCAFC大法廷が判断した事例

CAFC判決 2017年10月4日
Aqua Products, Inc. v. Joseph Matal

[経緯]

 Zodiac Pool Systems, Inc.は,Aqua Products, Inc.(A社)が保有する特許8,273,183(’183特許)に対してIPRの申立てをPTABに提出した。’183特許は,角度のついたジェット駆動推進 システムを有するスイミングプール清掃機について開示している。これを受け,A社はクレームを補正する申立てを行ったが,PTABはA社が先行技術に対する補正後クレームの特許性を証明していないことを理由に, その申立てを却下した。これに対してA社は,クレーム補正に関する特許法316条(e)「申立人は証拠の優越に基づき非特許性の主張を証明する義務を負う」のPTABの解釈は間違っており,クレーム補正申立ての 却下は不当であるとしてCAFCに控訴を行った。しかし,CAFCは補正後クレームの特許性証明の負担は特許権者にあり,特許権者により十分な主張がなされていないとしてPTABの審決を支持した。
これを受けて,A社はCAFCの大法廷による再審理を求めた。

[CAFCの判断]

 CAFC大法廷は,11人の判事により審議が行われ,判事の中でも5つの異なる意見に分かれる結果となったが,特許法316条(e)は代替および補正後クレームの特許性証明の負担を申立人が 負担することを要求していると結論付けた。すなわち,IPRにおける,補正後クレームを特許権者自身が特許性を立証すべきであるというUSPTOルールは誤りであり,補正後クレームの特許性についてIPR申立人に 立証責任を負わせると判示した。

(辻内 幹夫)

Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.